恋愛ドラマ『silent』から意外な注目作まで。テレビマンが評価する“秋ドラマ”中間採点

恋愛ドラマ『silent』から意外な注目作まで。テレビマンが評価する“秋ドラマ”中間採点

※画像は、ドラマ「silent」の公式Instagram(@fujitvsilent_fujitv)より。フォロワー数は100万人を突破

◆平均視聴率10%超えが一作のみだった夏クール

 7月から放送された夏ドラマは、綾野剛演じるプロサッカー選手を引退した男がセカンドチャンスの手助けに奮起する『オールドルーキー』(TBS系)、韓国ドラマ『梨泰院クラス』のリメイク版『六本木クラス』(テレビ朝日)、有村架純と中村倫也が共演したリーガルコメディ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)、人気脚本家・坂元裕二による『初恋の悪魔』(日本テレビ系)といった話題作がそろいながら、視聴率の面では大苦戦。

 平均視聴率が10%を超えたのは『オールドルーキー』の10.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)のみという結果に終わった。しかし、SNSでの反応や見逃し配信は春ドラマよりも盛り上がりを見せるなど、ドラマの視聴習慣への変化を感じさせるクールとなった。

 そんななか10月から放送されている秋ドラマを業界人はどう見ているのか? 序盤の放送を見た時点での感想を赤裸々に語ってもらった。

◆『相棒』の再結成と若返った日曜劇場に注目!

 オンエア前に秋ドラマの注目作として挙げられていたのは、水谷豊演じる杉下右京の“相棒”として、寺脇康文演じる亀山薫が約14年ぶりに復活した『相棒season21』(テレビ朝日系、水曜午後9時~)、ヒット脚本家・中園ミホが手掛ける岡田将生主演の医療ドラマ『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系、木曜午後9時~)、ゲーム業界をテーマに若手俳優の山崎賢人が主演を任され、若返りを図ろうと試みたTBSの看板枠・日曜劇場『アトムの童』(TBS系、日曜午後9時~)といった作品。しかし、関係者の多くが注目作として挙げたのは別のドラマだった。

◆繊細な恋愛ドラマなのに考察が白熱する『silent』

 最初に聞いたのは、キー局でドラマを手掛けている40代プロデューサーのA氏。開口一番で話題の恋愛ドラマについて熱く語った。また、今回取材を試みた業界人が全員、この作品を注目作に挙げていた。

「今クールは何といっても『silent』(フジテレビ系、木曜午後10時~)でしょう。内容は、川口春奈さん演じる主人公の紬が、かつての恋人で徐々に耳が聞こえにくくなる病気を患う目黒蓮(Snow Man)さん演じる想と再会したことから始まるラブストーリー。

 こう聞くと一見ベタなドラマですが、リアルなセリフ回しや登場人物の会話のシチュエーションが繊細で練りに練られている。新人脚本家・生方美久さんの起用を不安視する声もありましたが、初の連ドラとは思えないほどのクオリティーに業界人が驚愕しています。

 滑り出しこそ微妙でしたが10代~20代女性を中心にSNSで評判となり、第4話の見逃し配信は688万再生を獲得。ツイッターでも世界トレンド1位になるなど、リアルタイム視聴もしっかり伸びており、見事としか言いようがない。

 恋愛ドラマにもかかわらず、些細な会話やドラマ内で登場する楽曲やアイテムからさまざまな“考察合戦”が生まれているのも非常に特徴的。昨今、ミステリーやサスペンスドラマの打合せでは『考察が盛り上がるモノを!』をテーマに伏線を多く張るように作っているのですが、まさか恋愛ドラマでもできるとは……。新たな発見になりました。そう簡単にできそうにないですが(苦笑)」

 若い感性によって描かれるリアルな恋愛ドラマが、来クール以降増えていきそうだ。

◆痛快な展開がクセになる『ザ・トラベルナース』

 さらに、A氏はもう1作欠かさず見ているドラマを挙げてくれた。

「3話が12.6%と高い視聴率をキープしている、岡田将生さんがフリー看護師として医療現場に立ち向かっていく『ザ・トラベルナース』(テレビ朝日系)ですね。勧善懲悪モノを書かせたら右に出る者がいない『ドクターX ~外科医・大門未知子~』で知られる中園ミホさんの脚本が、今回も非常に痛快。二転三転する展開もよく作られており、飽きずに見られるドラマですね。

 岡田さんの高飛車な演技も素晴らしいですが、ベテラン看護師・九鬼を演じる中井貴一さんのまくしたてるような広島弁でのセリフは圧巻。等身大の人物像が魅力的な『silent』とは真逆で、登場人物のクセの強さが見どころの“ドラマらしいドラマ”ですよ」

 古くは『水戸黄門』(TBS系)に始まる勧善懲悪ドラマは、令和を迎えても永久に不滅のようだ。

◆笑って泣ける実話モノ『ファーストペンギン!』

 続いて、ドラマ制作会社に勤務する若手女性プロデューサーB氏にも現在放送中のドラマについて聞いた。

「現在、視聴率が7%台でやや苦戦している『ファーストペンギン!』(日本テレビ系、水曜午後10時~)はもっと盛り上がってもよい良作だと思います。奈緒さん演じるシングルマザーの主人公が漁業の世界に飛び込んで廃れた港町を変えていく実話を基にしたお仕事コメディドラマですが、出演者の演技力が高く見応えがありますね。喜怒哀楽の表現が多彩な奈緒さんはもちろん、昔堅気の漁師・洋を演じる堤真一さんの垢抜けない役どころもさすがの一言。

 コミカルで笑えるシーンと感動的なシーンが絶妙にちりばめられたストーリーも、予定調和になりすぎておらず、ベテラン脚本家・森下佳子さんの手腕が存分に発揮されている。

 スタッフの間では“奈緒さんが主演には早すぎたのかな”という話になっていますが、彼女の演技力は同世代でトップクラス。今からでもよいので見てほしい!」

 B氏が「次世代の国民的女優になる」と断言する同作ヒロイン・奈緒の天下一品の演技力を今からでも見てほしい。

◆本田翼の長所がうまく生きていない『君の花になる』 

 B氏は、今期のドラマで残念な作品も教えてくれた。

「本田翼さん主演の『君の花になる』(TBS系、火曜午後10時~)は、挑戦的な作品ではありますが、すでに飽きてしまっていますね……。本田さん演じる引きこもりになった元高校教師が、崖っぷちのボーイズグループの寮母になり、彼らをトップアーティストに成長させていくラブコメディーですが、本田さんの演技の良さが生かし切れていないかな。

 彼女は決して演技力は低くないと思いますが、もっと等身大の役どころがハマる女優さん。パブリックイメージは明るいキャラクターですが、ラブコメディーよりもシリアスなドラマのほうが存在感を出すだけに、過剰で違和感だらけの演技がどうしても気になってしまうし、本人も無理をしている感じが否めない。高橋文哉さんを筆頭にしたイケメン俳優たちを愛でたい人向けのドラマかなという印象」

 本田翼といえばラブコメという印象があったが、実は食い合わせが悪かったようだ。

◆ドラマのタブーを重厚に描く『エルピス-希望、あるいは災い-』

 最後に、深夜ドラマやウェブドラマを書くシナリオライターのC氏にも話を聞いた。

「実在する事件から着想を得た社会派ドラマで、テレビ局内のハラスメントや報道姿勢に切り込む『エルピス-希望、あるいは災い-』(フジテレビ系・月曜午後10時~)だけは欠かさず見ていますね。

 落ちぶれた女子アナを演じる長澤まさみさん、若手ディレクターを演じる眞栄田郷敦さんをはじめ、主要キャラの役への入り込み方が完璧。また、キーパーソンとなるさくらを演じている三浦透子さんの目力や表現も素晴らしい。

 その中でも、脚本がずば抜けて面白いですね。映画『ジョゼと虎と魚たち』や朝ドラ『カーネーション』を手掛けた渡辺あやさんにしか書けないストーリーだと思います。綿密に取材したであろう重厚でシリアスなテーマを、テンポよくコミカルな要素も織り交ぜつつ見せていく構成はもちろん、後味の残るセリフも引き込まれます。後半にいくにつれてストーリーも加速していくでしょうし、もっと視聴率も上がっていってほしい。見逃し配信で全話解禁してもよいのでは?」

 プロが認める天才脚本家が構想から6年を費やしたテレビ界のタブーに切り込む重厚ドラマは、後半以降の展開でますます盛り上がりを見せそうだ。

 秋の夜長だからこそ、社会現象になりつつある恋愛ドラマはもちろん、業界人たちが注目したドラマも見直してみてはいかが?

<取材・文/木田トウセイ>

【木田トウセイ】
テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。

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    文春みたいな露骨なゼニゲバエログロ着眼レッカバン喧伝増えた。 手抜き

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