ハーリー・レイス『ローズ家の戦争』のあとで――フミ斎藤のプロレス読本#050【全日本プロレスgaijin編エピソード18】

ハーリー・レイス『ローズ家の戦争』のあとで――フミ斎藤のプロレス読本#050【全日本プロレスgaijin編エピソード18】

『フミ斎藤のプロレス読本』#050は、199X年のハーリー・レイスのインタビュー記事の再録から。“ミスター・プロレス”はイボンヌ夫人との離婚を『ローズ家の戦争』と説明してくれた(写真はハーリー・レイスのオフィシャル・パブリシティー・フォトより)

 199X年

 ハーリー・レイスが待ち合わせ場所に指定したのは、カンザスシティーのダウンタウン、ブロードウェイ通りにある古ぼけたダイナーだった。

 約束の時間よりも5分早くお店に現れたハーリーは、顔なじみらしい中年のウエーターとひと言、ふた言、あいさつを交わし、ゆっくりとこちらのテーブルに向かって歩いてきた。

「ここはすぐにわかったか。メシはすんだか。この店に来たら、いつもローストビーフ・サンドウィッチを注文するんだ」

 ハーリーは4人がけのブースにどっかりと腰を下ろした。あいからわずドスの利いた声で、ナチュラルなカールのかかった短めの髪は“美獣”のイメージどおりだ。

 ダウンタウンのすぐ近くのウエストゲートという町でちいさなアパートメントを借りて、ひとり暮らしをはじめたばかりなのだという。イボンヌ夫人との離婚裁判が終わるまでリアウッドにあるお屋敷には近づくことができない。

 いったいいつになったらお金のかかる弁護士との交渉から解放されるのかわからないけれど、とりあえず裁判をスムーズにすすめるため、ハーリーは住み慣れた家を出た。追い出されたといったほうが正確かもしれない。

「ずっと昔からスーツケースひとつで暮らすことには慣れていたから、いまの生活は苦にはならない。なんでも自分でできる」

 ミズーリ州オイトマンというちいさな農村に生まれ、5人兄弟の上から二番めとして育ったハーリーは、14歳で家を出て、15歳のときにプロレスの世界に入った。

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