「シュートは卑しい単語だ」と教えてくれたゴッチ先生――フミ斎藤のプロレス読本#057【カール・ゴッチ編エピソード5】

「シュートは卑しい単語だ」と教えてくれたゴッチ先生――フミ斎藤のプロレス読本#057【カール・ゴッチ編エピソード5】

『フミ斎藤のプロレス読本』#057は、カールゴッチ先生と筆者の電話での会話から。ゴッチ先生は「シュートは卑しい単語だ」と教えてくれた(写真は米専門誌『レスリング・レビュー』より)

 199X年

「きのう種をまいたからといって、きょう花が咲きはじめるわけではない」

 カール・ゴッチのお言葉は、そのひとつひとつが“神様”からの啓示である。お年寄りだからというわけではないだろうけれど、なんでもストレートにいい切っちゃう。

 パンクラスの日本武道館大会を観終えたあと、ぼくはゴッチ先生とおしゃべりがしたくなって、フロリダに電話をかけてみた。

 まず、船木誠勝と鈴木みのるがどんな試合をしているかを報告しなければならない。船木の相手は、ゴッチ先生みずからが半年間もかけてケイコをつけたグレゴリー・スミットだった。いくらゴッチ先生のコーチを受けたといっても、ひょろひょろのスミットはやっぱり船木の敵ではなかった。

 もうひとりのゴッチ門下のトーマス・プケットは、下痢と発熱によるバッド・コンディションで今回は日本行きをあきらめた。

 ゴッチ先生は、自分を慕っている日本人レスラーたちがまだ“蹴っている”かどうかを知りたがっていた。キックとパンチはあくまでもディフェンスであって、オフェンスではない、というのがゴッチ先生の考えだ。

 いいタックルをもらわないように、キックを使って距離をはかる。キックやパンチで相手との距離を縮めたりフェイントをかけたりしておいて、タックルに入っていく。つかまえてしまえば、あとは徹頭徹尾レスリングですよ、というセオリーである。

「1対15、ではどちらが強い?」

 ゴッチ先生はたとえばなしがうまい。

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