崩落寸前の橋、老朽化した水道管…あなたの町にもある「危険インフラ」マップ
2023年01月19日 08時53分SPA!

崩落寸前の橋、老朽化した水道管…あなたの町にもある「危険インフラ」マップの画像
道路や水道など、生活を支えるインフラが全国各地で崩壊の一途を辿っている。しかし維持管理できない自治体も出てきているという。一体現場では何が起きているのか。全国で顕になりつつある“荒廃する日本”の実態に迫る。
◆日本全国で寿命を迎える老朽化インフラが急増中
トンネルや橋、水道管など日常生活に欠かせないインフラの老朽化が急速に進行しており、それに伴う事故の数々が相次いでいる。
’22年7月に福岡県北九州市では、突如地下に埋まっていた水道管が破裂。道路に水が噴き出し、周辺の道路が約2時間半にわたり通行止めとなった。現場付近の住民は当時をこう振り返る。
「仕事終わりでくつろいでいたのですが、いきなり鈍い爆発音が聞こえてきました。ベランダから外を眺めると、近くの電線に届く勢いで噴き上がる水柱が見えて……。何が起きたのかもわからなかったので、ただただ不安でした」
’65年に埋設されたこの水道管はかねてから危険視されており、’25年までに更新予定だったが、その前に限界を迎えた格好だ。
◆高度経済成長期に集中投資されたインフラが老朽化
このような事故は、どのインフラでも起こりうるのか。老朽化問題に早い段階から警鐘を鳴らしてきた東洋大学大学院教授の根本祐二氏に話を聞いた。
「橋や水道管などを中心に老朽化がピークを迎えつつあります。ある意味仕方のないことですね。というのも日本は高度経済成長期に集中投資されたインフラが山のようにあります。’22年に国土交通省が発表したグラフを見てもらうと一目瞭然でしょう。
このグラフは毎年日本で建てられた橋の数を記録したものです。’70年代は毎年1万本以上建設されていますが、徐々に下降線を辿り、’21年には数百本程度にまで減少しています」
◆多くのインフラがあと10年ほどで寿命を迎える
コンクリート橋の耐用年数は40~60年が目安とされている。何もしなければ、多くのインフラがあと10年ほどでバタバタと寿命を迎えていくこととなる。
「それを防ぐため、10年前から国土交通省は、橋やトンネルの健全度を診断する判断基準を4段階で提示しました。最も危険度が高い『Ⅳ 緊急措置段階』は即時架け替えが必要なレベルで、次になるべく早急な対応が求められる『Ⅲ 早期措置段階』が続きます。これら2つの診断を受けている橋は、現在全国で1割程度あります」
◆メンテナンス判断基準
Ⅰ健全
構造物の機能に支障が生じていない状態
Ⅱ予防保全段階
構造物の機能に支障が生じていないが、予防保全の観点から処置を講ずることが望ましい状態
Ⅲ早期措置段階
構造物の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずべき状態
Ⅳ緊急措置段階
構造物の機能に支障が生じている、又は生じる可能性が著しく高く、緊急に措置を講ずべき状態
◆なぜ補修や建て替えが行なわれない?
緊急性を要すると診断されても、修繕が終わっていないケースが半分もある現状。なぜ補修や建て替えが行なわれないのか?
「自治体によってはそもそも財源が不足しているという点が挙げられます。そこに加えてインフラの修繕費が一般会計費から捻出されることも一因です。一般会計費からは社会保障費や福祉の予算も出ていくため、苦渋の決断でそれらを優先し、インフラを後回しにする場合も多いのです」
◆根本氏が提唱する“省インフラ”とは?
財政難とともに頭の痛い問題として、技術者や担当者の人材不足も取り沙汰される。カネと人の資本がないなか、これからのインフラの考え方として根本氏が提唱するのが、“省インフラ”だ。一体どういうものなのか。
「省エネと同じで、インフラも省略することが必要。合併処理浄化槽という仕組みを導入すれば、生活排水などの汚水を家庭できれいにすることもできます。そうすれば下水処理場は不要。水道以外にも技術開発は進んでいるので、それらを駆使すればインフラのコストカットは可能です」
安全で安心な未来には持続可能なインフラを再構築することが不可欠だろう。
◆日本の危険なインフラ
・北海道札幌市豊平区/月寒西付近の水道管 危険度★★★
’22年12月、水道管の漏水により、道路の陥没事故が発生。付近の水道管は’72年に設置されたもので、全体の老朽化が懸念
・山形県遊佐町/栄橋 危険度★★★★
老朽化の影響で橋が崩落。遊佐町全体で補修が必要とされた橋は10か所以上あるが、費用の問題で手つかずのまま
・東京都江東区/亀戸駅前歩道橋 危険度★★★★
点検において、「緊急に措置すべき状態」と判定された。’23年春ごろより工事が予定されているが危険な状態が続く
・東京都大田区/羽田トンネル 危険度★★★★
日本で2番目に古い海底トンネルで、天井から海水が漏れたり、海水の塩分で鉄骨が腐食するといったことが起こる
・東京都杉並区/国道20号線 危険度★★★
「早期に措置すべき状態」と判定された橋が下高井戸駅前歩道橋など、この地に集中。運転中の崩落の可能性も
・神奈川県横浜市泉区/岡津町付近の電線 危険度★★
’22年8月、山の樹木と電線が擦れ漏電。近隣住民からは山火事の危険があるとして、早期の対応を求める声も
・長野県佐久市/八風山トンネル 危険度★★★
「早期措置段階」に指定された上信越自動車道上のトンネル。佐久市内には、他にも同判定を受けたトンネルが集中
・京都府宇治市/天ヶ瀬ダム 危険度★★★
’64年開業のアーチ式ダム。近年多い”予想外の大雨”に耐えられず、京都府や大阪府に流れ出る可能性も指摘される
・大阪府大阪市/駒川中野付近の水道管 危険度★★★
’16年に破裂。水道管が直径1mもある主要基幹の1つで、市も優先的な工事を目指すが現在も難航している
・福岡県北九州市/小倉北区の水道管 危険度★★★
’22年7月に破裂し、地上10mまで水が噴き出る。市内の約4分の1の水道管が法定耐用年数を超えており、早急な対応が必要
【東洋大学教授・根本祐二氏】
78年東京大学卒。銀行勤務の後、06年から現職。著書に『朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機』(日本経済新聞出版社刊)など
取材・文/SPA!インフラの崩壊取材班
―[崩壊寸前![日本のインフラ危険MAP]]―
◆日本全国で寿命を迎える老朽化インフラが急増中
トンネルや橋、水道管など日常生活に欠かせないインフラの老朽化が急速に進行しており、それに伴う事故の数々が相次いでいる。
’22年7月に福岡県北九州市では、突如地下に埋まっていた水道管が破裂。道路に水が噴き出し、周辺の道路が約2時間半にわたり通行止めとなった。現場付近の住民は当時をこう振り返る。
「仕事終わりでくつろいでいたのですが、いきなり鈍い爆発音が聞こえてきました。ベランダから外を眺めると、近くの電線に届く勢いで噴き上がる水柱が見えて……。何が起きたのかもわからなかったので、ただただ不安でした」
’65年に埋設されたこの水道管はかねてから危険視されており、’25年までに更新予定だったが、その前に限界を迎えた格好だ。
◆高度経済成長期に集中投資されたインフラが老朽化
このような事故は、どのインフラでも起こりうるのか。老朽化問題に早い段階から警鐘を鳴らしてきた東洋大学大学院教授の根本祐二氏に話を聞いた。
「橋や水道管などを中心に老朽化がピークを迎えつつあります。ある意味仕方のないことですね。というのも日本は高度経済成長期に集中投資されたインフラが山のようにあります。’22年に国土交通省が発表したグラフを見てもらうと一目瞭然でしょう。
このグラフは毎年日本で建てられた橋の数を記録したものです。’70年代は毎年1万本以上建設されていますが、徐々に下降線を辿り、’21年には数百本程度にまで減少しています」
◆多くのインフラがあと10年ほどで寿命を迎える
コンクリート橋の耐用年数は40~60年が目安とされている。何もしなければ、多くのインフラがあと10年ほどでバタバタと寿命を迎えていくこととなる。
「それを防ぐため、10年前から国土交通省は、橋やトンネルの健全度を診断する判断基準を4段階で提示しました。最も危険度が高い『Ⅳ 緊急措置段階』は即時架け替えが必要なレベルで、次になるべく早急な対応が求められる『Ⅲ 早期措置段階』が続きます。これら2つの診断を受けている橋は、現在全国で1割程度あります」
◆メンテナンス判断基準
Ⅰ健全
構造物の機能に支障が生じていない状態
Ⅱ予防保全段階
構造物の機能に支障が生じていないが、予防保全の観点から処置を講ずることが望ましい状態
Ⅲ早期措置段階
構造物の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずべき状態
Ⅳ緊急措置段階
構造物の機能に支障が生じている、又は生じる可能性が著しく高く、緊急に措置を講ずべき状態
◆なぜ補修や建て替えが行なわれない?
緊急性を要すると診断されても、修繕が終わっていないケースが半分もある現状。なぜ補修や建て替えが行なわれないのか?
「自治体によってはそもそも財源が不足しているという点が挙げられます。そこに加えてインフラの修繕費が一般会計費から捻出されることも一因です。一般会計費からは社会保障費や福祉の予算も出ていくため、苦渋の決断でそれらを優先し、インフラを後回しにする場合も多いのです」
◆根本氏が提唱する“省インフラ”とは?
財政難とともに頭の痛い問題として、技術者や担当者の人材不足も取り沙汰される。カネと人の資本がないなか、これからのインフラの考え方として根本氏が提唱するのが、“省インフラ”だ。一体どういうものなのか。
「省エネと同じで、インフラも省略することが必要。合併処理浄化槽という仕組みを導入すれば、生活排水などの汚水を家庭できれいにすることもできます。そうすれば下水処理場は不要。水道以外にも技術開発は進んでいるので、それらを駆使すればインフラのコストカットは可能です」
安全で安心な未来には持続可能なインフラを再構築することが不可欠だろう。
◆日本の危険なインフラ
・北海道札幌市豊平区/月寒西付近の水道管 危険度★★★
’22年12月、水道管の漏水により、道路の陥没事故が発生。付近の水道管は’72年に設置されたもので、全体の老朽化が懸念
・山形県遊佐町/栄橋 危険度★★★★
老朽化の影響で橋が崩落。遊佐町全体で補修が必要とされた橋は10か所以上あるが、費用の問題で手つかずのまま
・東京都江東区/亀戸駅前歩道橋 危険度★★★★
点検において、「緊急に措置すべき状態」と判定された。’23年春ごろより工事が予定されているが危険な状態が続く
・東京都大田区/羽田トンネル 危険度★★★★
日本で2番目に古い海底トンネルで、天井から海水が漏れたり、海水の塩分で鉄骨が腐食するといったことが起こる
・東京都杉並区/国道20号線 危険度★★★
「早期に措置すべき状態」と判定された橋が下高井戸駅前歩道橋など、この地に集中。運転中の崩落の可能性も
・神奈川県横浜市泉区/岡津町付近の電線 危険度★★
’22年8月、山の樹木と電線が擦れ漏電。近隣住民からは山火事の危険があるとして、早期の対応を求める声も
・長野県佐久市/八風山トンネル 危険度★★★
「早期措置段階」に指定された上信越自動車道上のトンネル。佐久市内には、他にも同判定を受けたトンネルが集中
・京都府宇治市/天ヶ瀬ダム 危険度★★★
’64年開業のアーチ式ダム。近年多い”予想外の大雨”に耐えられず、京都府や大阪府に流れ出る可能性も指摘される
・大阪府大阪市/駒川中野付近の水道管 危険度★★★
’16年に破裂。水道管が直径1mもある主要基幹の1つで、市も優先的な工事を目指すが現在も難航している
・福岡県北九州市/小倉北区の水道管 危険度★★★
’22年7月に破裂し、地上10mまで水が噴き出る。市内の約4分の1の水道管が法定耐用年数を超えており、早急な対応が必要
【東洋大学教授・根本祐二氏】
78年東京大学卒。銀行勤務の後、06年から現職。著書に『朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機』(日本経済新聞出版社刊)など
取材・文/SPA!インフラの崩壊取材班
―[崩壊寸前![日本のインフラ危険MAP]]―
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