「30代は絶望しかない」俳優・三浦貴大はいかに人生を楽しむようになったか

「30代は絶望しかない」俳優・三浦貴大はいかに人生を楽しむようになったか

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インターネット巨大掲示板「2ちゃんねる」に試用版が公開されたファイル共有ソフト“Winny”がシェアを伸ばし次第に悪用され、2004年に開発者・金子勇氏が著作権法違反幇助の容疑で逮捕された。その実話に基づく映画『Winny』の公開がスタートし、評価を集めている。
 金子勇さんを演じた東出昌大とともにW主演を務め、彼を弁護した弁護士・壇俊光さんを演じたのは、昨年放送されたドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』の好演も話題を集めた三浦貴大(@TakahiroMiura_o)。

 現在も現役の檀弁護士は、本作の法廷シーンの監修も務めている。本人が目の前にいたわけだが、演じるにあたって、難しさよりも「楽しさ」をまっさきに思ったと口にする三浦からは、芝居に対するポジティブな空気が感じられた。しかし数年前には「ずっとキツくて。芝居も本当に辞めようと思っていた」という。30代後半、何が三浦を変えたのか?

◆当時から事件のことは知っていた

――実話をベースにしていますが、三浦さん自身は当時、ファイル共有ソフト「Winny」のことを知っていましたか?

三浦貴大(以下、三浦):はい。もともと「2ちゃんねる」も見ていたので、「Winny」のようなファイル共有ソフトのことは、使ってはいませんでしたけど、存在は知っていました。

 ニュースになったときも、「2ちゃんねる」の人たちがどう思っているかというのはなんとなく見ていました。ただ深くは全く考えていませんでしたね。今回、映画を通して「Peer to Peer(P2P)」という技術が、どんなに(時代を)先取りしたものだったのかということも分かりましたし、本当にすごい人が捕まってしまったんだなと。

◆実在の人物を演じるのは「楽しそう」

――本作では、金子さんを弁護した壇(俊光)弁護士をモデルとした役を演じました。オファーを受けた際、率直に何を思われましたか?

三浦:実在の人物を演じることが楽しそうだなと思ったのが、まず最初です。

――「楽しそう」ですか? 難しそう、ではなく? 今も現役の弁護士さんですよね。本作の監修もしてらっしゃいますが。

三浦:何をやるにしても、どこか難しくないと面白くない部分もあると思うので。「楽しそう」が第一でした。物語に関しては、マスコミの報道とか、当時もなんとなく知ってはいましたけど、実際に関わっていた当事者である壇さんの視点で見られることが、すごく興味深かったです。

 映画には人に知らせたり広めたり、伝える力がありますが、警察や司法が完全に正しいものであるということもなければ、逆に全部が間違っているという話でもない。いろんなことを知っていくことの、ひとつとして、この作品が、多角的な目線で物事を見られるきっかけになるといいなと思います。

◆30代になったら楽しもうとしないと

――ところで、5年ほど前に三浦さんに取材した際、「30代は絶望しかない」とお話されていて(苦笑)。ネガティブ思考な姿勢がユニークな方だなと感じたんです。なので、最初に実在の人物を演じることに、まず「面白い」と感じたとポジティブな意見が出てきたのが意外でした。

三浦:ネガティブはネガティブなままなんです。ただ、仕事に関しては、昔よりは楽しもうとしていますね。根っこの考え方としては、前にお話ししたときのままなんですよ。30代って面白くない。全然。20代は仕事でも初めてのことがたくさんあって、何も考えなくてもとにかく楽しい時期なんですよね。

 でも30代に入ってくると経験値が増したことで、楽しさが減ってくる。よく言いますよね。小さいころに夏休みが長く感じるのは、初めてのことを脳が新鮮に感じるからで、大人になると経験したことばかりになってくるから1年がすぐに経ってしまうと。その通りだなと。だから、30代になったら、自分で楽しもうとしないと。

◆もう辞めようと思ったとき、残っていたこと

――自ら進んで意識改革を。

三浦:そうなんです。人生を楽しそうにしている人たちって、やっぱり自分でちゃんとそっちに振っているんですよ。自分も仕事くらいは楽しむほうへ持って行かないとなと。

――誰かから影響を? それとも自分で気づけたんですか?

三浦:誰かに相談するタイプではないですし、自分の中で自然にですかね。30代に入って、ずっとキツくて、仕事もやめようと思ってたんです。本当に。でもそのときに、「いや、でもまだ自分から楽しみに行くってのをやってなかったな。まだその余地があったか」と思って。

――やってみたら実際に変わった。

三浦:基本はネガティブですけどね。でも面白い役をやってみようとか、自分で面白くしてみようとか、そういう気持ちになりましたね。楽しめる部分を自分で探したいなと。

◆SNSは自分に向いていると思っていた

――そうした変化を周りに指摘されることはありますか?

三浦:SNSとか、ちょっとした配信とかを始めたんですけど、「そういうのは絶対にやらないタイプだと思ってた」と会社の人から言われましたね。でも自分ではもともとSNSには向いているだろうと思ってたんです。何言われても全然気にしないので。気にしないというか、たとえば、「三浦の芝居、めちゃくちゃ下手だよね」とつぶやかれたとしても、「そりゃそうだよ。そんなの知っててやってるし」みたいに思うだけなので。

――たとえば、昨年のドラマ『エルピス』での好演はSNSでもかなり評判になりました。三浦さんの耳にも入ったのでは?

三浦:そうですね、そういう反応は全体的に全部見ますし。いいものも悪いものも。というか、フォロワーの方から飛んでくるのは褒めてくれるものばかりなので、そんなのばかり読んでいると「ダマされる」と思っちゃうんです。

「俺がこんな褒められるわけない」と。で、逆に悪いコメントを探しに行っちゃいます。それで何か言われているのを見つけて、「そうだよな」とバランスを取るみたいな。ネガティブな根っこの部分を残しつつ、前より人生も仕事も楽しんでいければ。

◆0から1を作ることには全く興味がない

――本作では開発者の未来が遮断されてしまいましたが、三浦さんは年齢的にも与えられるだけじゃなく、切り開いていく側の立場にもなっていくかと思います。意識の変化はありますか?

三浦:そういった部分では変わってなくて。というか、むしろ以前より強くなっているのですが、僕が役者をやっていて、監督などには全く興味がない理由って、0から1を作ることに全く興味がないからなんです。1をよりよくすることに、役者として楽しみを見出しているというか。

 役者って、セリフがあって監督の演出があって、その枠のなかでよりよくするために模索するというのが面白いところかなと思ってるんです。たとえば、絵画だったら絵具でありたい。画家に「あなたは今回、赤です」と言われたら、いろんな赤の中から、監督の想像以上の赤を自分が作ればいいかと。切り開いていく人より、道具でありたいんです。

――ありがとうございます。最後に『Winny』をこれから観る人にひと言お願いします。

三浦:当時の事件に対して、いろんなイメージを持っている人がいると思いますが、この映画は当事者たちの思いを知られる機会ですし、最初にも言いましたが、物事を多角的に見られるきっかけになる作品だと思います。あとは、エンターテインメントなので純粋に楽しんでいただければと思います。

<取材・文・撮影/望月ふみ>



【望月ふみ】

ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異 Twitter:@mochi_fumi

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