現3歳世代が猛威を奮う「社台の逆襲」は本物か? データで検証
2023年03月25日 08時25分SPA!

サウジアラビアのG3・レッドシーターフHCを制したシルヴァーソニックも社台ファームの生産馬
◆社台の逆襲が始まった!?
年明け早々に、シンザン記念をライトクオンタムが、京成杯をソールオリエンスが勝利。その後もチューリップ賞をモズメイメイが制し桜花賞に名乗りをあげ、先週のスプリングSは無敗でベラジオオペラが優勝。現3歳世代で、社台ファーム生産馬が猛威を奮っています。
2021年には、ノーザンファームがダービーに史上最多となる12頭出しで掲示板を独占、昨年も8頭出走と、近年は生産界において、ノーザンファーム生産馬が圧倒する状況が続いていました。
ただ、生産者に着目している競馬ファンの方であれば、この世代は、新馬戦から「例年とは様相が違うな」「ずいぶん、縦縞(社台レースホースの勝負服)が活躍してるな」と薄々感じていたのでは?
そこで今回は、現3歳世代で、どの程度「社台の逆襲」が始まっているか、データを交えてお伝えします。
◆2020年産馬は社台ファーム勢が大活躍
まずはこの世代(2020年産)の生産者ランキングおよび馬主ランキングをみてみましょう。
2020年産馬 生産者別ランキング(勝利数順)
1位 ノーザンファーム 60勝 勝率15% 複勝率42% 単回収率85% 複回収率79%
2位 社台ファーム 46勝 勝率28% 複勝率37% 単回収率231% 複回収率101%
2020年産馬 馬主別ランキング(勝利数順)
1位 社台レースホース 21勝 勝率32% 複勝率55% 単回収率281% 複回収率117%
2位 シルクレーシング 11勝 勝率16% 複勝率39% 単回収率62% 複回収率70%
3位 サンデーレーシング 10勝 勝率16% 複勝率45% 単回収率143% 複回収率93%
4位 キャロットファーム 9勝 勝率13% 複勝率47% 単回収率40% 複回収率76%
成績をみると一目瞭然。社台ファーム生産馬、社台レースホースが素晴らしい数字を残しています。特に馬主別では、2位~4位に、主にノーザンファーム生産馬で構成されているクラブを従えて、社台レースホースがトップの21勝を挙げています。
社台レースホースの馬は、複勝率が55%と高い上に、複勝回収率でも100%を大きく上回っており、「よく馬券に絡む上に儲かる」という状態。馬券ファンにとって心強い存在となっています。
◆過去との比較で浮かび上がる‟明暗”
社台ファームの好調ぶりは、過去データと比較すると明らかです。
世代別 新馬戦成績の比較
2019年産
ノーザンファーム 73勝 勝率17% 複勝率43% 単回収率84% 複回収率86%
社台ファーム 27勝 勝率10% 複勝率26% 単回収率133% 複回収率99%
2018年産
ノーザンファーム 73勝 勝率17% 複勝率44% 単回収率111% 複回収率80%
社台ファーム 17勝 勝率7% 複勝率26% 単回収率63% 複回収率79%
2017年産
ノーザンファーム 89勝 勝率23% 複勝率48% 単回収率108% 複回収率84%
社台ファーム 22勝 勝率8% 複勝率28% 単回収率67% 複回収率77%
2017年には新馬戦で89勝挙げていたノーザンファーム生産馬が、73勝→73勝→60勝と大幅に勝ち星を減らしたのに対し、社台ファーム生産馬は、22勝→17勝→27勝→46勝。ノーザンファームが減らした勝ち星+αを、社台ファームが手にしています。2018年産で大きく数字を落としていた社台ファーム生産馬が、2019年産から巻き返しに転じ、それが結実したのが現2歳世代となる2020年産馬ということ。ファンは、ノーザンファーム>社台ファームと強く印象づけられているので、馬券妙味があるわけです。
◆今後も「社台狙い」は有効
社台ファームの成績が向上した要因は、坂路の改修、外厩の整備などが考えられますが、もともと、競馬通で知られる野球解説者の山本昌さんは「抱えている繁殖牝馬のレベルは(ノーザンファームと)遜色ないから、きっかけ一つで一気に浮上してくるはず」と常々おっしゃっていました。
「取材で伺った時に、社台ファームの皆さんは全員がとても元気に挨拶してくださる。これは従業員への強い意識付けをしないとできないこと。復権は近いと思う」とも。
さまざまな要因が重なって、今、まさに復活の狼煙を上げたところなのでしょう。
具体的な馬券の狙い目としてはノーザンファーム生産馬が1番人気になっているレースでの社台ファーム生産馬の狙い撃ちが面白そう。どうしても、昨今のペーパーオーナーゲームブームの影響もあいまって、ノーザンファーム生産馬が過剰に売れる傾向にあります。
ノーザンファーム生産馬が強いことは揺るぎない事実ですが、日本の競馬がパリミュチュエル方式で行われている以上、狙いはまだファンの意識が追いついていない社台ファーム生産馬。
そういえば、冒頭に挙げた京成杯もスプリングSも、1番人気はノーザンファーム生産馬のセブンマジシャンでした。
文/松山崇
【松山崇】
馬券攻略誌『競馬王』の元編集長。現在はフリーの編集者・ライターとして「競馬を一生楽しむ」ためのコンテンツ作りに勤しんでいる。
年明け早々に、シンザン記念をライトクオンタムが、京成杯をソールオリエンスが勝利。その後もチューリップ賞をモズメイメイが制し桜花賞に名乗りをあげ、先週のスプリングSは無敗でベラジオオペラが優勝。現3歳世代で、社台ファーム生産馬が猛威を奮っています。
2021年には、ノーザンファームがダービーに史上最多となる12頭出しで掲示板を独占、昨年も8頭出走と、近年は生産界において、ノーザンファーム生産馬が圧倒する状況が続いていました。
ただ、生産者に着目している競馬ファンの方であれば、この世代は、新馬戦から「例年とは様相が違うな」「ずいぶん、縦縞(社台レースホースの勝負服)が活躍してるな」と薄々感じていたのでは?
そこで今回は、現3歳世代で、どの程度「社台の逆襲」が始まっているか、データを交えてお伝えします。
◆2020年産馬は社台ファーム勢が大活躍
まずはこの世代(2020年産)の生産者ランキングおよび馬主ランキングをみてみましょう。
2020年産馬 生産者別ランキング(勝利数順)
1位 ノーザンファーム 60勝 勝率15% 複勝率42% 単回収率85% 複回収率79%
2位 社台ファーム 46勝 勝率28% 複勝率37% 単回収率231% 複回収率101%
2020年産馬 馬主別ランキング(勝利数順)
1位 社台レースホース 21勝 勝率32% 複勝率55% 単回収率281% 複回収率117%
2位 シルクレーシング 11勝 勝率16% 複勝率39% 単回収率62% 複回収率70%
3位 サンデーレーシング 10勝 勝率16% 複勝率45% 単回収率143% 複回収率93%
4位 キャロットファーム 9勝 勝率13% 複勝率47% 単回収率40% 複回収率76%
成績をみると一目瞭然。社台ファーム生産馬、社台レースホースが素晴らしい数字を残しています。特に馬主別では、2位~4位に、主にノーザンファーム生産馬で構成されているクラブを従えて、社台レースホースがトップの21勝を挙げています。
社台レースホースの馬は、複勝率が55%と高い上に、複勝回収率でも100%を大きく上回っており、「よく馬券に絡む上に儲かる」という状態。馬券ファンにとって心強い存在となっています。
◆過去との比較で浮かび上がる‟明暗”
社台ファームの好調ぶりは、過去データと比較すると明らかです。
世代別 新馬戦成績の比較
2019年産
ノーザンファーム 73勝 勝率17% 複勝率43% 単回収率84% 複回収率86%
社台ファーム 27勝 勝率10% 複勝率26% 単回収率133% 複回収率99%
2018年産
ノーザンファーム 73勝 勝率17% 複勝率44% 単回収率111% 複回収率80%
社台ファーム 17勝 勝率7% 複勝率26% 単回収率63% 複回収率79%
2017年産
ノーザンファーム 89勝 勝率23% 複勝率48% 単回収率108% 複回収率84%
社台ファーム 22勝 勝率8% 複勝率28% 単回収率67% 複回収率77%
2017年には新馬戦で89勝挙げていたノーザンファーム生産馬が、73勝→73勝→60勝と大幅に勝ち星を減らしたのに対し、社台ファーム生産馬は、22勝→17勝→27勝→46勝。ノーザンファームが減らした勝ち星+αを、社台ファームが手にしています。2018年産で大きく数字を落としていた社台ファーム生産馬が、2019年産から巻き返しに転じ、それが結実したのが現2歳世代となる2020年産馬ということ。ファンは、ノーザンファーム>社台ファームと強く印象づけられているので、馬券妙味があるわけです。
◆今後も「社台狙い」は有効
社台ファームの成績が向上した要因は、坂路の改修、外厩の整備などが考えられますが、もともと、競馬通で知られる野球解説者の山本昌さんは「抱えている繁殖牝馬のレベルは(ノーザンファームと)遜色ないから、きっかけ一つで一気に浮上してくるはず」と常々おっしゃっていました。
「取材で伺った時に、社台ファームの皆さんは全員がとても元気に挨拶してくださる。これは従業員への強い意識付けをしないとできないこと。復権は近いと思う」とも。
さまざまな要因が重なって、今、まさに復活の狼煙を上げたところなのでしょう。
具体的な馬券の狙い目としてはノーザンファーム生産馬が1番人気になっているレースでの社台ファーム生産馬の狙い撃ちが面白そう。どうしても、昨今のペーパーオーナーゲームブームの影響もあいまって、ノーザンファーム生産馬が過剰に売れる傾向にあります。
ノーザンファーム生産馬が強いことは揺るぎない事実ですが、日本の競馬がパリミュチュエル方式で行われている以上、狙いはまだファンの意識が追いついていない社台ファーム生産馬。
そういえば、冒頭に挙げた京成杯もスプリングSも、1番人気はノーザンファーム生産馬のセブンマジシャンでした。
文/松山崇
【松山崇】
馬券攻略誌『競馬王』の元編集長。現在はフリーの編集者・ライターとして「競馬を一生楽しむ」ためのコンテンツ作りに勤しんでいる。
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