ソフトバンク・甲斐、オリックス・宇田川だけじゃない、2023年プロ野球「ネクストブレイク」育成選手5選

ソフトバンク・甲斐、オリックス・宇田川だけじゃない、2023年プロ野球「ネクストブレイク」育成選手5選

画像は、鈴木大和のInstagram(@yamato_s8)より

◆育成ドラフト出身・甲斐や宇田川らがWBCで躍動!
 先日まで開催された野球の世界一を決める『ワールド・ベースボール・クラシック』(以下、『WBC』)では、NPBやメジャーで活躍するプロ野球選手たちが世界の強豪と熱戦を繰り広げた。大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)やダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)といったバリバリのメジャーリーガーが圧巻のプレーを見せた一方で、正捕手として守備の要を担った甲斐拓也(ソフトバンク)、豪速球で相手打者を手玉に取った宇田川優希(オリックス)らのプレーも印象的だった。
 WBC選抜メンバーはドラフト1位指名がズラリと名を連ねるなか、甲斐は’10年の育成ドラフト6位、宇田川は’20年の育成ドラフト3位の選手。また、牧原大成(ソフトバンク、’10年育成ドラフト5位)、周東佑京(ソフトバンク、’17年ソフトバンク育成2位)もメンバー入りし、チームに貢献した。最低年俸はサラリーマンの平均年収を下回る240万円、背番号3桁という厳しい条件で入団、プロ入り前までは全く注目を浴びていなかった彼らだが、今回のWBCで世界を驚かせる活躍を見せて、見事にジャパニーズドリームを成し遂げた。

 そんな彼らに続く、今シーズンの活躍が期待される育成ドラフト出身の選手を紹介していく。

◆①回転数の多いストレートが武器の西武・豆田泰志

 最初に紹介するのは、西武ライオンズに’20年育成ドラフト4位で入団した豆田泰志投手(推定年俸280万円、背番号124)だ。

 高校球界では全く無名の浦和実業時代に名門・浦和学院を相手に2度も好投を見せて話題になるものの、支配下ドラフトでは指名されず育成枠で入団した3年目。身長173センチと小柄な体型をうまく生かした投球フォームからスピンの効いた伸びのあるボールを投げ込む本格派右腕で、藤川球児(元・阪神タイガース)を思わせるホップするようなストレートの軌道が特徴的だ。ややスタミナに欠ける点と細かい制球面に難はあるが、今シーズンはオープン戦や教育リーグでも三振を連発し好投を続けており、一気に支配下登録を果たして1軍の中継ぎ投手として機能しそうだ。

◆②“足でメシが食える”と言わしめた巨人・鈴木大和

 続いては、近年育成ドラフトに力を入れている読売ジャイアンツの’21年育成ドラフト1位で入団した北海学園大学出身の鈴木大和外野手(推定年俸410万円、背番号003)だ。

 今年の1軍キャンプに育成選手で唯一招集されると、紅白戦でたった2球のうちに二盗・三盗を成功させるなど、異次元の俊足が自慢の選手だ。50メートルを5.79秒で駆け抜ける圧倒的なスピードはもちろん、投手のクセを盗んだり、配球を読んだりする野球センスも抜群。また、リードやスライディングもうまく、盗塁のスペシャリストになれる逸材として原辰徳監督を含めた首脳陣を驚かせている。

 まだまだ非力ゆえ課題はバッティングではあるが、かつて“スーパーカートリオ”の一員として活躍したプロ野球OB・高木豊は「足でメシを食べていける選手。すぐに支配下登録するべき」と太鼓判を押している。現在、外野守備兼走塁コーチを務める通算228盗塁の“代走のスペシャリスト”鈴木尚広を超える“鈴木2世”になる可能性を十分に秘めている。

◆③強烈な打球を飛ばすスラッガーの巨人・三塚琉生

 もう一人、読売ジャイアンツに育成ドラフト出身でスターになり得る能力を持つ選手がいる。桐生第一高校から’22年育成ドラフト6位で入団した三塚琉生外野手(年俸360万円、背番号031)だ。3年夏の直前で下半身を負傷した影響もあり、支配下ドラフトには漏れてしまったが、「すぐにでも支配下登録を」という関係者やファンの声も多い選手の筆頭だ。

 そんな彼の持ち味は、鳴り物入りで入団したドラフト1位ルーキー・浅野翔吾に勝るとも劣らないスイングスピードと飛距離。ややオープンスタンスぎみのフォームから無駄のないフォロースルーで豪快なフルスイングを披露し、ジャイアンツOBでスカウト部長の水野雄仁は「巨人で活躍した吉村禎章さんにそっくり」と打撃技術とスイングの強さを絶賛。対外試合でも鋭い打球の初ヒットをマークし、ますます注目度を上げている。

 ディフェンス面でも幅広い守備範囲と安定したスローイング能力を持っており、足りないのは実戦経験くらいだろう。必ずや早いうちの支配下登録を勝ち取ってくれるはずだ。

◆苦労人強肩キャッチャーのDeNA・上甲凌大

 サイ・ヤング賞を受賞したトレバー・バウアー投手の加入で話題のDeNAにも期待の育成選手がいる。’22年育成ドラフト1位の上甲凌大捕手(推定年俸340万円、背番号127)だ。
 宇和島東高校時代は無名ながら、社会人時代に出場した都市対抗野球で2打席連続アーチを記録。‘22年からはNPB入りを果たすために四国アイランドリーグplusに挑戦し、リーグ最多タイの29盗塁刺をマーク。長打力と正確で素早いスローイングが魅力的なスケールの大きな大型キャッチャーだ。支配下ドラフトで指名漏れしたのは、スカウトが独立リーグのみの成績でしか判断できなかったことが大きかったようだ。

 しかし、いざキャンプが始まってみると首脳陣や関係者たちが上甲のハイレベルな2塁送球に仰天。矢のように鋭いスローイングは「甲斐(ソフトバンク)や小林(ジャイアンツ)に十分匹敵する」と言わしめたほど。昨年、レギュラーを務め上げた正捕手がいないDeNAだけに、早々の支配下登録、1軍の舞台でのデビューも近そうだ。

◆和田に続く先発サウスポーを目指すソフトバンク・三浦瑞樹

 甲斐、周東、牧原、千賀滉大(ニューヨーク・メッツ)といった育成ドラフト出身から球界を代表する選手たちを輩出し続けている福岡ソフトバンクホークス。同チームに次なる育成出身の注目株がいる。技巧派サウスポーの三浦瑞樹投手(推定年俸400万円、’21年育成ドラフト4位)だ。
 盛岡大学付属高校時代に3季連続で出場を果たすなど安定した投球術が魅力で、東北福祉大学に進学後は、華奢だった下半身を鍛え上げることでスタミナも格段にアップ。侍ジャパン大学代表候補に選出されるエースに成長した。

 しかし、各球団スカウトの評価は高くなく、左腕の少ないソフトバンクの育成ドラフトで拾ってもらう形で入団。三浦本人も「選ばれないかと思っていた」と本音を漏らしたほどだ。

 ゆったりとした力感の少ないフォームから腕をしならせるように投げるストレートは、140キロ中盤だがスピード以上の威力があり、スライダーやチェンジアップといった変化球の精度も抜群。何よりピンチでの内角攻めやコントロールの良さは目を見張るものがあり、投手には欠かせない強いメンタルがウリだ。

 昨シーズン後に参加したオーストラリアでのウインターリーグでも活躍しており、今季中の支配下登録、1軍登板も確実だ。

 ここまで、背番号3ケタでサラリーマンの平均年収を下回る年俸からジャパニーズドリームを目指す育成ドラフト出身の選手たちを紹介してきた。強いハングリー精神と強烈な個性を持つ彼らならば、球界を盛り上げる未来のスターになるはずだ。

<取材・文/木田トウセイ>



【木田トウセイ】

テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。

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