食パン「西厚東薄」の理由
2023年09月22日 08時52分SPA!

6枚切で作るフルーツサンド(ヤマザキッチンより)
「朝はパン派」と、キッチンに何かしらのパンを常備している家庭は多いだろう。特に食パンに関しては、関西では厚切りが好まれ、関東では薄切りが好まれる「西厚東薄」だと言われている。
たしかに関東に住む筆者の家では、6枚切りまたは8枚切りの食パンを選ぶことが多い。スーパーの陳列棚を見ても、4枚切りや5枚切りよりも圧倒的に多い印象だ。
なぜ食パンは「西厚東薄」なのか? また、4、5、6、8枚切りはあるのにもかかわらず、なぜ7枚切りがないのか? そして別の種類のパンにも地域差があるのか? 気になるパンの秘密を調べてみた。
◆関西の友人に話を聞いたところ…
実際の関西出身の人の印象はどうなのだろうか? まずは、関西在住の友人に話を聞いたところ、8枚切りのユーザーは少ない印象だった。
「食パンは4枚切り買うし、スーパーでも厚切りのだけ売り切れてることがよくある」
「薄いとお腹いっぱいにならないし、厚切りをよく食べるかも」
「焼いたら中がふわふわになるから厚いのを食べがち」
「厚いほうが良い物食べてる感ある」
という感じで、実に7人中6人が「食パンは厚切りのほうを好む」と回答してくれた。あくまで筆者の周囲に限った話だが、たしかに西厚東薄の傾向は少なからずあるようだ。
◆枚数別データを見ると「意外な結果」に!
より詳しい情報を得るために、製パン業界最大手の山崎製パン株式会社の広報担当・岡健二さんに話を聞くと、具体的なデータを示して説明してくれた。
「データ上は西厚東薄の傾向はあると思います。例えば、2023年6月度における、当社主力食パン『ロイヤルブレッド』の枚数別出荷数量を見てみましょう。まずは、関東圏のデータですが、8枚切りが29%、6枚切りが51%、5枚切りは12%、4枚切りは8%でした。一方で、関西圏のデータは、逆に8枚切りが4%、6枚切りが36%、5枚切りは43%、4枚切りは17%と対照的でした」
このように、ロイヤルブレッドの枚数別出荷数量には、明らかな地域差が出ていた。
◆業者団体に「厚切りの件」を聞いてみた
そこで、今度は大手製パン業者による団体、一般社団法人日本パン工業会に電話し、村林さんに取材した。
西厚東薄の歴史や根拠について尋ねてみると、「西厚東薄は一般的に言われていますが、理由は不明なんです。西厚東薄の傾向があって関西の嗜好が形成されたのではなく、関西の嗜好性があって西厚東薄の傾向が生まれたものと考えています」(村林さん)とのこと。
先の枚数別出荷数量のデータに明らかなように関西人は厚めの食パンが好みのようだ。さらに、村林さんによると、厚さによって適した用途も変わってくるという。
「食パンは薄切りにすると歯切れがよくなるので、サンドウィッチなど具材を挟む用途に使われます。一方で、厚切りにすると噛み応えがよくなり、もっちり感が楽しめるので、単体でそのまま食べたり、フレンチトーストやハニートーストのように焼いたりして食べると、よりおいしく食べられます」
◆市販のパンの幅が関係していた!
そして食パンの枚数について、なぜ7枚切りがないのか尋ねると、市販の食パンの幅に理由があるという。
「市販の食パン一袋分の厚さが約12cm(120mm)のものが多く、4、5、6、8で割り切れるので、管理(厚さの設定)がしやすいんですよね。しかし7だと割りにくいため、7枚切りは売られていないのではないかと思われます。どうしても、7枚切が食べたければ、町のパン屋さんに頼むと切ってくれるかもしれませんよ」
また、日本での地域差の理由には直接関係ないものの、別観点で見ると、ある傾向が見えてくると村林さんは語る。
「時代背景や、パンが貴重かどうかで厚さも移り変わっているんですよ。例えば、パンが高級品であった時代や東南アジアのような発展途上国などでは、薄いパンが主流となる印象です。また、構成家族が多い家庭も薄切りパンを購入する割合は高くなります」
◆あんぱんやメロンパンにも地域差がある
ほかにも、関東と関西の地域差として特徴的なものとして挙げられるのは、あんぱんだという。
「あんぱんの中身も、地域差があります。関東は舌触りの滑らかなこしあん、関西は粒感が楽しめるつぶあんが好まれる傾向があります」(村林さん)
実際に村林さんが関西の友人につぶあんを好む理由を聞いたところ、「素材の味を感じられるから」という理由が多かったそう。また、メロンパンも地域によって違いが顕著で、形状については半球形状とアーモンド(ラグビーボール)形状で大別できるそう。
「全国的には、半球形状で、表面に甘いビスケット生地を載せて焼いたメロンパンが主流。表面のスリット(模様)のパターンはいくつもあり、主流である格子模様のほかに平行線、円周部からの放射状、中心からの放射状などがあります。スリットなしのものにも、ひび状の割れがあるものや、ないものと多様です。変わったところでは、網目状のパイ生地や、無発酵生地(餃子の皮のイメージ)を載せて焼いたものもあります」
◆白あん入りのメロンパンも
「対して、近畿・中国地方の一部ではメロンパンというと、ラグビーボール形状のものを指し、白あん入りのものもあるようです。逆に、半球形状の一般的なメロンパンは『サンライズ』、広島では『コッペパン』と呼ばれることもあったりします。ほかにも、特異な例としては、沖縄の『ウルトラメロンチョコ』(ぐしけんパン)のようなロール(コッペパン)形状もあって、面白いですよね」
最後に、村林さんは「大前提にはなりますが、嗜好については個人差がありますので、好みのパンを召し上がるのが一番です」と付け加えた。パンの地域差を意識すると、今までとは違った楽しみ方ができそうだ。
<取材・文/はるうらら>
【はるうらら】
医療従事者として都内総合病院に勤務していたが、もともと興味のあったWebライティング業界に思い切って転身。大手メディアと業務委託契約を結び、時事ネタ・取材をメインに記事を執筆。中には450万PVを達成した記事も。ちなみに国内外問わず旅行が趣味で、アメリカ・オーストラリアで生活をした経験もあるバイリンガル。現在、海外移住計画中
たしかに関東に住む筆者の家では、6枚切りまたは8枚切りの食パンを選ぶことが多い。スーパーの陳列棚を見ても、4枚切りや5枚切りよりも圧倒的に多い印象だ。
なぜ食パンは「西厚東薄」なのか? また、4、5、6、8枚切りはあるのにもかかわらず、なぜ7枚切りがないのか? そして別の種類のパンにも地域差があるのか? 気になるパンの秘密を調べてみた。
◆関西の友人に話を聞いたところ…
実際の関西出身の人の印象はどうなのだろうか? まずは、関西在住の友人に話を聞いたところ、8枚切りのユーザーは少ない印象だった。
「食パンは4枚切り買うし、スーパーでも厚切りのだけ売り切れてることがよくある」
「薄いとお腹いっぱいにならないし、厚切りをよく食べるかも」
「焼いたら中がふわふわになるから厚いのを食べがち」
「厚いほうが良い物食べてる感ある」
という感じで、実に7人中6人が「食パンは厚切りのほうを好む」と回答してくれた。あくまで筆者の周囲に限った話だが、たしかに西厚東薄の傾向は少なからずあるようだ。
◆枚数別データを見ると「意外な結果」に!
より詳しい情報を得るために、製パン業界最大手の山崎製パン株式会社の広報担当・岡健二さんに話を聞くと、具体的なデータを示して説明してくれた。
「データ上は西厚東薄の傾向はあると思います。例えば、2023年6月度における、当社主力食パン『ロイヤルブレッド』の枚数別出荷数量を見てみましょう。まずは、関東圏のデータですが、8枚切りが29%、6枚切りが51%、5枚切りは12%、4枚切りは8%でした。一方で、関西圏のデータは、逆に8枚切りが4%、6枚切りが36%、5枚切りは43%、4枚切りは17%と対照的でした」
このように、ロイヤルブレッドの枚数別出荷数量には、明らかな地域差が出ていた。
◆業者団体に「厚切りの件」を聞いてみた
そこで、今度は大手製パン業者による団体、一般社団法人日本パン工業会に電話し、村林さんに取材した。
西厚東薄の歴史や根拠について尋ねてみると、「西厚東薄は一般的に言われていますが、理由は不明なんです。西厚東薄の傾向があって関西の嗜好が形成されたのではなく、関西の嗜好性があって西厚東薄の傾向が生まれたものと考えています」(村林さん)とのこと。
先の枚数別出荷数量のデータに明らかなように関西人は厚めの食パンが好みのようだ。さらに、村林さんによると、厚さによって適した用途も変わってくるという。
「食パンは薄切りにすると歯切れがよくなるので、サンドウィッチなど具材を挟む用途に使われます。一方で、厚切りにすると噛み応えがよくなり、もっちり感が楽しめるので、単体でそのまま食べたり、フレンチトーストやハニートーストのように焼いたりして食べると、よりおいしく食べられます」
◆市販のパンの幅が関係していた!
そして食パンの枚数について、なぜ7枚切りがないのか尋ねると、市販の食パンの幅に理由があるという。
「市販の食パン一袋分の厚さが約12cm(120mm)のものが多く、4、5、6、8で割り切れるので、管理(厚さの設定)がしやすいんですよね。しかし7だと割りにくいため、7枚切りは売られていないのではないかと思われます。どうしても、7枚切が食べたければ、町のパン屋さんに頼むと切ってくれるかもしれませんよ」
また、日本での地域差の理由には直接関係ないものの、別観点で見ると、ある傾向が見えてくると村林さんは語る。
「時代背景や、パンが貴重かどうかで厚さも移り変わっているんですよ。例えば、パンが高級品であった時代や東南アジアのような発展途上国などでは、薄いパンが主流となる印象です。また、構成家族が多い家庭も薄切りパンを購入する割合は高くなります」
◆あんぱんやメロンパンにも地域差がある
ほかにも、関東と関西の地域差として特徴的なものとして挙げられるのは、あんぱんだという。
「あんぱんの中身も、地域差があります。関東は舌触りの滑らかなこしあん、関西は粒感が楽しめるつぶあんが好まれる傾向があります」(村林さん)
実際に村林さんが関西の友人につぶあんを好む理由を聞いたところ、「素材の味を感じられるから」という理由が多かったそう。また、メロンパンも地域によって違いが顕著で、形状については半球形状とアーモンド(ラグビーボール)形状で大別できるそう。
「全国的には、半球形状で、表面に甘いビスケット生地を載せて焼いたメロンパンが主流。表面のスリット(模様)のパターンはいくつもあり、主流である格子模様のほかに平行線、円周部からの放射状、中心からの放射状などがあります。スリットなしのものにも、ひび状の割れがあるものや、ないものと多様です。変わったところでは、網目状のパイ生地や、無発酵生地(餃子の皮のイメージ)を載せて焼いたものもあります」
◆白あん入りのメロンパンも
「対して、近畿・中国地方の一部ではメロンパンというと、ラグビーボール形状のものを指し、白あん入りのものもあるようです。逆に、半球形状の一般的なメロンパンは『サンライズ』、広島では『コッペパン』と呼ばれることもあったりします。ほかにも、特異な例としては、沖縄の『ウルトラメロンチョコ』(ぐしけんパン)のようなロール(コッペパン)形状もあって、面白いですよね」
最後に、村林さんは「大前提にはなりますが、嗜好については個人差がありますので、好みのパンを召し上がるのが一番です」と付け加えた。パンの地域差を意識すると、今までとは違った楽しみ方ができそうだ。
<取材・文/はるうらら>
【はるうらら】
医療従事者として都内総合病院に勤務していたが、もともと興味のあったWebライティング業界に思い切って転身。大手メディアと業務委託契約を結び、時事ネタ・取材をメインに記事を執筆。中には450万PVを達成した記事も。ちなみに国内外問わず旅行が趣味で、アメリカ・オーストラリアで生活をした経験もあるバイリンガル。現在、海外移住計画中
西日本で食パンが厚い理由に「腹を満たすため」というのはかなり外れているだろうな。パンの消費量が多いのは神戸や京都だし、パン食自体が定着してる上、フランスパンやドイツパンの日本での始まりは神戸だったりする。元々の食べる一般的な厚さがあって、それが東に伝わった時に、食べ慣れていない人たちが薄くして節約したんじゃないか?実際、パン食が遅かった東南アジアなどでは薄いという傍証もコメントされてる。
一般社団法人日本パン工業会に取材した。 「西厚東薄は一般的に言われていますが、理由は不明なんです。」 調査、アンケートもしないで「理由は不明」 何をやっている会なのでしょう?税務調査したほうが良さそうです。
食パンだけで腹をいっぱいにしようと思わないしな。 うちはホームベーカリーでパンを焼いている。 切るときは8枚と6枚を混ぜて切ったりしてる。 小腹が減ったときにおやつ感覚で8枚切りを食べるとちょうどいい。食パンだけで腹いっぱいにしようなんてな。関西人なのかな。 東と西で違うものはたくさんある。 まあ、どうでもいい話題だな。