元ガールズ女王が語る「競輪選手時代の過酷な練習」。‟足が太いだけでは勝てない”理由
2023年10月21日 08時29分SPA!

こちらが高木さんが現役時代に使用していた、滑るボードに自転車のハンドルを取り付けたお手製のトレーニング器具。足をスライドさせて前後に動かして、それを上半身で支える……といったトレーニングをしていたとのこと
ガールズケイリンの人気筆頭格として、1つの時代を牽引してきた高木真備さんに、競輪にまつわる話を語っていただく連載企画。高木さんは一昨年の末に開催された「オッズパーク杯 ガールズケイリングランプリ2021」で見事に優勝。年間賞金女王の称号を獲得し、「やり切った!」という気持ちで昨年5月に選手を引退。現在は保護犬・保護猫活動を行っている。
そんな高木さんに元ガールズケイリン選手としての様々な裏話を聞いていく当連載企画。バイク誘導や街道練習などについて語ってもらった前回に引き続き、今回は「現役時代の練習」などについての話を聞いた。
◆競輪選手は「足の太さ」が注目されがちだが…
ガールズケイリンのポスターには、数年前まで「顔より太もも。」というキャッチコピーが載っていた。ガールズケイリン選手の太ももの平均は59.7cmで、一般女性の平均からは約8cmも太いため、足のたくましさに注目されることが多い。
もちろん足のトレーニングは日々行っているだろうが、「足だけ鍛えていても自転車を速く漕げるようにはならないんです」と高木さんは話す。
「競輪選手は足を鍛えていると思われがちですが、体幹のトレーニングも重要です。特に女性は男性に比べて上半身の筋力がつきにくいことも多いので、上半身のトレーニングが大事になります。自転車を漕いでいるときの姿勢は前傾なので、自分の身体を支えられないと足にどれだけパワーがあってもスピードを出せないんです。私も最初は足ばかりを鍛えて上半身はあまり鍛えていませんでしたが、上半身もしっかり鍛えるようになったことで持っているパワーを出せるようになりました」
◆筋肉をつけるためのトレーニングではない
競輪選手は足を太くするためのトレーニングを行っているのではなく、自転車を速く漕ぐためのトレーニングをした結果、足が太くなっている選手が多いということ。ただ筋肉をつけるだけでは重くなってしまうため、トレーニング方法も重要だという。
「ウエイトトレーニングをやるにしても、指導してもらっていた方から『自転車に繋がるウエイトをした方がいいよ』と言われていました。例えばボディビルダーを目指す人なら、ムキムキになって見せる筋肉をつけることが目的だと思いますが、私たちは自転車を早く漕ぐことが目的であって、ちゃんと目的に合ったトレーニングをしなくてはいけないんです。ただ筋肉をつけるだけでは重くなってしまうだけなので、自転車の姿勢に近づけたウエイトをやっていました。その姿勢でトレーニングできるようになるのに何年もかかりましたね」
◆競輪は真っ直ぐ走らないと不利になる
体幹やトレーニング方法などの話を聞いたうえで現役時代の高木さんのレース映像をみると、デビューした年とグランプリ優勝時の走りでは、明らかな変化が見受けられた。デビュー時の走りは、ハンドルが小刻みに揺れながら走っているように見えるが、デビューから2年後の2016年あたりの映像では、キレイに真っ直ぐ走っているのがわかる。その点は、本人も改善しようと心がけていたようだ。
「学生時代にハンドボールやっていたこともあって、腕の力だけをみたらそれなりにありました。でも体幹が壊滅的にないから、全力で自転車を漕ぐとハンドルに力が加わってしまって、小刻みに震えてしまっていたんです。震えてしまうことで、若干ではありますが蛇行していることになるので、真っ直ぐ走らないと不利になってしまいます」
◆高木隆弘選手の教えで「真っ直ぐ走れるようになりました」
そして、その悩みを改善してくれたのが、師匠的存在となった高木隆弘選手だったという。
「なかなか直すのが難しくて悩んでいたのですが……。それを直してくれたのが、いつも練習をみてもらっていた高木隆弘さんだったんです。体幹トレーニングと、自転車の乗り方を教えてもらったことで真っ直ぐ走れるようになりました。自分でも直らないものだと思っていたので、真っ直ぐ走れるようになったときは感動しましたね」
◆飛躍のきっかけとなったタイミング
デビュー1年目の高木さんは決勝にも乗れないことがあったが、「この先に力をつけるため」と思い、どのレースでも先行をしていたようだ。ただ、先行を続けるだけでは、劇的には良くなっていなかったようで、“積み上げてきたことと教えてもらったことのマッチ”こそが飛躍のきっかけだったという。
「私はデビューから1~2年目の頃はガムシャラに先行していたんです。『レースでの先行がどんな練習よりも練習になるから、強くなるための近道だぞ』と言われていました。それを続けていれば強くなると信じていて、ちょっとずつは良くなっていたんですけど、劇的には良くなっていなくて……。そこで練習方法だったりセッティングだったりを教えてくれる方に出会い、その次の年で最多勝になることができたんです。そのくらい飛躍できたのは、高木隆弘さんに教えてもらうだけでもダメだったと思うし、自分なりにガムシャラにやり続けてるだけでもダメだったと思うから、やってきたことと教えてもらったことがマッチしたことで上手くいったと思います」
◆若手ガールズ選手に注目
高木さんは最後に、「若手の頃はいろんな先輩方からいろんなアドバイスをもらうと思いますが、そのなかで信じられる存在の人からのアドバイスをしっかり受け入れて、そこで学んだことを続けることが、また一段と強くなれるかの分かれ道かなと思います」と、若手ガールズ選手へエールを送った。
競輪は、知れば知るほど人間模様が垣間見える。師匠と弟子、同期のライバル、ベテランと新人など、人間関係に注目してみれば、より一層“競輪”を楽しめること間違いないだろう。
取材・文/セールス森田
【セールス森田】
Web編集者兼ライター。パチンコライター・動画編集者を経て、現在は日刊SPA!編集・インタビュー記事の執筆を中心に活動中。全国各地の取材に出向くフットワークの軽さがセールスポイント
そんな高木さんに元ガールズケイリン選手としての様々な裏話を聞いていく当連載企画。バイク誘導や街道練習などについて語ってもらった前回に引き続き、今回は「現役時代の練習」などについての話を聞いた。
◆競輪選手は「足の太さ」が注目されがちだが…
ガールズケイリンのポスターには、数年前まで「顔より太もも。」というキャッチコピーが載っていた。ガールズケイリン選手の太ももの平均は59.7cmで、一般女性の平均からは約8cmも太いため、足のたくましさに注目されることが多い。
もちろん足のトレーニングは日々行っているだろうが、「足だけ鍛えていても自転車を速く漕げるようにはならないんです」と高木さんは話す。
「競輪選手は足を鍛えていると思われがちですが、体幹のトレーニングも重要です。特に女性は男性に比べて上半身の筋力がつきにくいことも多いので、上半身のトレーニングが大事になります。自転車を漕いでいるときの姿勢は前傾なので、自分の身体を支えられないと足にどれだけパワーがあってもスピードを出せないんです。私も最初は足ばかりを鍛えて上半身はあまり鍛えていませんでしたが、上半身もしっかり鍛えるようになったことで持っているパワーを出せるようになりました」
◆筋肉をつけるためのトレーニングではない
競輪選手は足を太くするためのトレーニングを行っているのではなく、自転車を速く漕ぐためのトレーニングをした結果、足が太くなっている選手が多いということ。ただ筋肉をつけるだけでは重くなってしまうため、トレーニング方法も重要だという。
「ウエイトトレーニングをやるにしても、指導してもらっていた方から『自転車に繋がるウエイトをした方がいいよ』と言われていました。例えばボディビルダーを目指す人なら、ムキムキになって見せる筋肉をつけることが目的だと思いますが、私たちは自転車を早く漕ぐことが目的であって、ちゃんと目的に合ったトレーニングをしなくてはいけないんです。ただ筋肉をつけるだけでは重くなってしまうだけなので、自転車の姿勢に近づけたウエイトをやっていました。その姿勢でトレーニングできるようになるのに何年もかかりましたね」
◆競輪は真っ直ぐ走らないと不利になる
体幹やトレーニング方法などの話を聞いたうえで現役時代の高木さんのレース映像をみると、デビューした年とグランプリ優勝時の走りでは、明らかな変化が見受けられた。デビュー時の走りは、ハンドルが小刻みに揺れながら走っているように見えるが、デビューから2年後の2016年あたりの映像では、キレイに真っ直ぐ走っているのがわかる。その点は、本人も改善しようと心がけていたようだ。
「学生時代にハンドボールやっていたこともあって、腕の力だけをみたらそれなりにありました。でも体幹が壊滅的にないから、全力で自転車を漕ぐとハンドルに力が加わってしまって、小刻みに震えてしまっていたんです。震えてしまうことで、若干ではありますが蛇行していることになるので、真っ直ぐ走らないと不利になってしまいます」
◆高木隆弘選手の教えで「真っ直ぐ走れるようになりました」
そして、その悩みを改善してくれたのが、師匠的存在となった高木隆弘選手だったという。
「なかなか直すのが難しくて悩んでいたのですが……。それを直してくれたのが、いつも練習をみてもらっていた高木隆弘さんだったんです。体幹トレーニングと、自転車の乗り方を教えてもらったことで真っ直ぐ走れるようになりました。自分でも直らないものだと思っていたので、真っ直ぐ走れるようになったときは感動しましたね」
◆飛躍のきっかけとなったタイミング
デビュー1年目の高木さんは決勝にも乗れないことがあったが、「この先に力をつけるため」と思い、どのレースでも先行をしていたようだ。ただ、先行を続けるだけでは、劇的には良くなっていなかったようで、“積み上げてきたことと教えてもらったことのマッチ”こそが飛躍のきっかけだったという。
「私はデビューから1~2年目の頃はガムシャラに先行していたんです。『レースでの先行がどんな練習よりも練習になるから、強くなるための近道だぞ』と言われていました。それを続けていれば強くなると信じていて、ちょっとずつは良くなっていたんですけど、劇的には良くなっていなくて……。そこで練習方法だったりセッティングだったりを教えてくれる方に出会い、その次の年で最多勝になることができたんです。そのくらい飛躍できたのは、高木隆弘さんに教えてもらうだけでもダメだったと思うし、自分なりにガムシャラにやり続けてるだけでもダメだったと思うから、やってきたことと教えてもらったことがマッチしたことで上手くいったと思います」
◆若手ガールズ選手に注目
高木さんは最後に、「若手の頃はいろんな先輩方からいろんなアドバイスをもらうと思いますが、そのなかで信じられる存在の人からのアドバイスをしっかり受け入れて、そこで学んだことを続けることが、また一段と強くなれるかの分かれ道かなと思います」と、若手ガールズ選手へエールを送った。
競輪は、知れば知るほど人間模様が垣間見える。師匠と弟子、同期のライバル、ベテランと新人など、人間関係に注目してみれば、より一層“競輪”を楽しめること間違いないだろう。
取材・文/セールス森田
【セールス森田】
Web編集者兼ライター。パチンコライター・動画編集者を経て、現在は日刊SPA!編集・インタビュー記事の執筆を中心に活動中。全国各地の取材に出向くフットワークの軽さがセールスポイント
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