35歳の元『egg』モデルが、卒業から10年後もギャルを貫く理由
2023年11月20日 15時53分SPA!

元『egg』モデルのゆまちさん(35歳)<撮影/藤井厚年>
平成ギャルがトレンドになっている昨今。見た目だけではなく精神性にも注目が集まり、ポジティブに自分らしさを貫くマインドが支持されているという。そうした再ブームで気になるのは、かつて渋谷センター街を賑わせていたギャルたちの今だ。10代・20代を謳歌していた彼女たちは、年齢を重ねてどのような女性になっているのだろう。
ギャル雑誌『egg』で人気を博したゆまちさん(35歳)。00年代後半〜休刊直前まで、18歳から6年9ヶ月にわたって読者モデルとして出演し続けた。本誌卒業から10年近く経つというが、すらっとした抜群のスタイルに、金髪のロングヘア、クールでパッチリとしたアイメイクは健在。現在もギャルであり続けている。そんなゆまちさんに当時を振り返ってもらいつつ、今でもギャルに惹かれる理由について話を聞いた。
◆ギャルになりたいけどなれなかった学生時代
eggモデルデビューを果たしたのは社会人になってからという遅咲きだったゆまちさんが、ギャルを好きになったきっかけは何だったのだろうか。
「高校に入って一気に変わりました。みんなルーズ(ソックス)履いてるし、金髪にしてるし、強そうなのに可愛くて。地元では出会ったことがない人たちばっかりがいたんですよね。私もあの人たちみたいに垢抜けて可愛くなりたいってすぐに思いました。ギャル雑誌を買うようになったのもそれからです」
高校入学と共にギャルに目覚めたゆまちさん。しかし、厳しい両親からは髪を染めることはおろか化粧をすることすら禁止されていたという。思う存分ファッションを楽しむ友人の横で、我慢を強いられることも多かった。
その影響もあってか、ギャルに対する憧れはさらに高まっていく。両親から「就職すれば何をしてもいい」と言われていたゆまちさんは、高校卒業してすぐに外見を規制されない職場に就職。欲望が溢れ出したかのように、髪を明るくし、盛りメイクを施し、ネイルも派手にしたりと、思いっきり羽を伸ばした。
「肌を綺麗にみせたいとか、鼻を高くしたいとか。コンプレックスをどうにかしたいと思って盛っていくと、結果的に世間から“ギャル”と言われるような見た目になるんです。ギャルメイクをすれば好きな自分に変われて自信を持てました」
そうしてギャル生活を満喫していたある日、ゆまちさんに転機が訪れた。
◆人気モデルになっても尽きない不安「若くて可愛い子がどんどん出てくる」
「たまたま渋谷109の前にいたら、eggの編集部員から声をかけられて、スナップの企画に出ることになったんです。撮影されて喜んでたら『来月もあるからまた出てよ』って言われて(マジか……)みたいな。また呼んでもらえるなんて思わなかったから驚きましたね」
この日を境にモデルとしての活動が始まった。大好きな雑誌にまた出たいという一心だったゆまちさんは、自身の個性を探し出し、読者を惹きつける見せ方を必死に研究したという。
スカウトされるほどのポテンシャルがある上に、向上心もあってギャル愛にも溢れている。人気に火がつくのは時間の問題だった。読者から「ゆまちボディになりたい」と言われる細身スタイル、強かさと愛らしさを兼ね備えた容姿、親しみやすいキャラクター……次第にeggの看板モデルとしてカリスマ的存在になっていく。その人気は雑誌の域を超え、アパレルブランドのプロデュース業、さらには歌手としてCDデビューも果たすなど、目まぐるしいほどの飛躍を遂げた。
しかし人気絶頂の最中であっても不安は消えなかったという。eggは中高生をメインとしたギャル雑誌でもある。ゆまちさんが活躍する一方で、新人モデルたちが次々と頭角を現していたのだ。
「若くて可愛い子がどんどん出てくるなかで、自分は歳を取っていく。読者からいつまで応援してもらえるかもわからない。どれだけ仕事をもらえても、次撮影に呼ばれなかったらって常に不安でした。歌手になれたのもブランドプロデュースできたのも、“eggモデル”だったからこそですし、雑誌に出られなくなることが一番怖かったですね」
当時から多様化は進んでいたとはいえ、まだ「ギャルはティーンのもの」という価値観が強かった。たった1年でもトレンドはあっという間に変わってしまう。競争が激しい世界で先輩や同期は続々と巣立っていった。
そんななか、ゆまちさんもまた20代半ばに近づくにつれて、徐々に出番が減っていったという。
「気づいたら全盛期はとうに過ぎて、若い子がメインを張るのを見守るおばさんみたいな感じになっていました。同期もいなくなっていくし、後輩の中でポツンとひとりだったので、寂しかったですね。カルチャーと時代の移り変わりで、自分もそろそろ終わりだろうねって」
◆悩んでもeggモデルであり続けた理由
ポジティブなギャル仲間もいた一方で、自身はネガティブな方だったと話す。たしかに当時の話を聞いていると、後ろ向きな発言が多いような気もする。
ではなぜそれだけ苦悩していたのにeggモデルを辞めなかったのだろうか。そう筆者が問うと、ゆまちさんは優しく微笑みながらすぐに答えた。
「eggが好きだったから。“eggモデルのゆまち”でいたかったから」
そして、eggモデルとしての思いをこのように語ってくれた。
「仕事って今まで全然続かなかったんです。続けられてもせいぜい半年ぐらい。そんな私がモデルでいられたのはやっぱり好きだったからなんですよね。せっかく見つけられた居場所を失いたくなかった。だからこそ不安だったんです。ずっと悩んでたけど、私の頭にあるのは卒業よりも“卒業を選ばないためにはどうするか”ということでした」
若手たちの勢いが増していくなかで、ゆまちさんはeggモデルであり続けた。2010年代前半になる頃には古着をMIXさせたファッションも流行し、見た目におけるギャルの在り方も様変わりしていた。
それでもゆまちさんのスタンスは変わらない。本誌では「ギャルが消滅しないようにゆまがギャル文化を盛り上げていきたい!!そのためにも、ゆまはずっとギャルで居続けようと思ってるよ」とコメントを寄せていたこともあった。
「ギャルは強くてかっこいいっていうのが、私の中のイメージなんです。eggのキャッチコピーは“GET WILD & BE SEXY”でしたけど、まさにそういう女性に惹かれていたんですよね」
◆「好きなことをしていたい」ギャルモデルからパチスロ演者へ
高校時代に憧れていたギャル文化が失われないようモデル業に奮闘していたゆまちさんだったが、徐々に“やるべきことはすべてやりきった”という感覚も芽生えていったという。
そこでモデル以外の道について考えるようになっていく。元々仕事が続かない性格だったこともあり、好きなことでなければならないという思いも強い。そこでゆまちさんの興味を引いたのが、パチスロ関連の仕事だった。
「ずっとパチスロが好きだったんですよ。大好きすぎてその日撮影したギャラを使い果たしちゃうぐらい(笑)。本当にずっと打ちにいってたから、パチスロの仕事ができたら楽しいだろうなって」
eggモデルデビューを果たしてから6年9ヶ月。ゆまちさんは新たな道へ進むことを決意した。
卒業後、美容室の受付をやりながら、パチスロ系番組や来店イベントに出演するなどパチスロ演者としての活動をスタート。“元eggモデルのゆまち”という個性を活かしながら、パチスロの魅力を届けていった。
◆ギャルファッションは「装備」。いくつになってもぶれない愛情
こうしてモデル以外の仕事も始めたゆまちさんだったが、ギャルでいられる環境に身を置くことはやはり徹底している。
「ギャルに出合っちゃったから。もうそうじゃない自分には戻れないんですよね。化粧を薄くしてみたこともあったけど、それだとやっぱりテンションは上がらないし、笑顔でいられないし、モチベーションも下がっていく。私にとってギャルファッションは 『装備』。社会で闘っていくために必要なものなんです」
その後、事務所を独立してフリーランスとなったゆまちさん。2020年には結婚と出産も経験し、一児の母になった。今は家庭のことを第一に考えているという。
子育てを優先しながら仕事を続けていけたら……そう語りながらも、仕事に対する考え方は一貫していた。
「やっぱり自分が好きだと思えることをやっていきたいですね。そうじゃないと続けていけない性格なので。それはegg時代から一番大事にしてることかもしれません。あと、今はTikTokやInstagramでファンの方ともコミュニケーションがとりやすいので、今でも応援してくれる人たちに恩返しできる何かを見つけていきたいです」
好きなことに対する情熱は人一倍強い。ゆまちさんの揺るぎない芯の強さに、筆者はとても惹かれていた。
<取材・文/奈都樹、撮影/藤井厚年>
【奈都樹】
1994年生まれ。リアルサウンド編集部に所属後、現在はフリーライターに。『リアルサウンド』『日刊サイゾー』などで執筆。またnoteでは、クォーターライフクライシスの渦中にいる20代の声を集めたインタビューサイト『小さな生活の声』を運営している。
ギャル雑誌『egg』で人気を博したゆまちさん(35歳)。00年代後半〜休刊直前まで、18歳から6年9ヶ月にわたって読者モデルとして出演し続けた。本誌卒業から10年近く経つというが、すらっとした抜群のスタイルに、金髪のロングヘア、クールでパッチリとしたアイメイクは健在。現在もギャルであり続けている。そんなゆまちさんに当時を振り返ってもらいつつ、今でもギャルに惹かれる理由について話を聞いた。
◆ギャルになりたいけどなれなかった学生時代
eggモデルデビューを果たしたのは社会人になってからという遅咲きだったゆまちさんが、ギャルを好きになったきっかけは何だったのだろうか。
「高校に入って一気に変わりました。みんなルーズ(ソックス)履いてるし、金髪にしてるし、強そうなのに可愛くて。地元では出会ったことがない人たちばっかりがいたんですよね。私もあの人たちみたいに垢抜けて可愛くなりたいってすぐに思いました。ギャル雑誌を買うようになったのもそれからです」
高校入学と共にギャルに目覚めたゆまちさん。しかし、厳しい両親からは髪を染めることはおろか化粧をすることすら禁止されていたという。思う存分ファッションを楽しむ友人の横で、我慢を強いられることも多かった。
その影響もあってか、ギャルに対する憧れはさらに高まっていく。両親から「就職すれば何をしてもいい」と言われていたゆまちさんは、高校卒業してすぐに外見を規制されない職場に就職。欲望が溢れ出したかのように、髪を明るくし、盛りメイクを施し、ネイルも派手にしたりと、思いっきり羽を伸ばした。
「肌を綺麗にみせたいとか、鼻を高くしたいとか。コンプレックスをどうにかしたいと思って盛っていくと、結果的に世間から“ギャル”と言われるような見た目になるんです。ギャルメイクをすれば好きな自分に変われて自信を持てました」
そうしてギャル生活を満喫していたある日、ゆまちさんに転機が訪れた。
◆人気モデルになっても尽きない不安「若くて可愛い子がどんどん出てくる」
「たまたま渋谷109の前にいたら、eggの編集部員から声をかけられて、スナップの企画に出ることになったんです。撮影されて喜んでたら『来月もあるからまた出てよ』って言われて(マジか……)みたいな。また呼んでもらえるなんて思わなかったから驚きましたね」
この日を境にモデルとしての活動が始まった。大好きな雑誌にまた出たいという一心だったゆまちさんは、自身の個性を探し出し、読者を惹きつける見せ方を必死に研究したという。
スカウトされるほどのポテンシャルがある上に、向上心もあってギャル愛にも溢れている。人気に火がつくのは時間の問題だった。読者から「ゆまちボディになりたい」と言われる細身スタイル、強かさと愛らしさを兼ね備えた容姿、親しみやすいキャラクター……次第にeggの看板モデルとしてカリスマ的存在になっていく。その人気は雑誌の域を超え、アパレルブランドのプロデュース業、さらには歌手としてCDデビューも果たすなど、目まぐるしいほどの飛躍を遂げた。
しかし人気絶頂の最中であっても不安は消えなかったという。eggは中高生をメインとしたギャル雑誌でもある。ゆまちさんが活躍する一方で、新人モデルたちが次々と頭角を現していたのだ。
「若くて可愛い子がどんどん出てくるなかで、自分は歳を取っていく。読者からいつまで応援してもらえるかもわからない。どれだけ仕事をもらえても、次撮影に呼ばれなかったらって常に不安でした。歌手になれたのもブランドプロデュースできたのも、“eggモデル”だったからこそですし、雑誌に出られなくなることが一番怖かったですね」
当時から多様化は進んでいたとはいえ、まだ「ギャルはティーンのもの」という価値観が強かった。たった1年でもトレンドはあっという間に変わってしまう。競争が激しい世界で先輩や同期は続々と巣立っていった。
そんななか、ゆまちさんもまた20代半ばに近づくにつれて、徐々に出番が減っていったという。
「気づいたら全盛期はとうに過ぎて、若い子がメインを張るのを見守るおばさんみたいな感じになっていました。同期もいなくなっていくし、後輩の中でポツンとひとりだったので、寂しかったですね。カルチャーと時代の移り変わりで、自分もそろそろ終わりだろうねって」
◆悩んでもeggモデルであり続けた理由
ポジティブなギャル仲間もいた一方で、自身はネガティブな方だったと話す。たしかに当時の話を聞いていると、後ろ向きな発言が多いような気もする。
ではなぜそれだけ苦悩していたのにeggモデルを辞めなかったのだろうか。そう筆者が問うと、ゆまちさんは優しく微笑みながらすぐに答えた。
「eggが好きだったから。“eggモデルのゆまち”でいたかったから」
そして、eggモデルとしての思いをこのように語ってくれた。
「仕事って今まで全然続かなかったんです。続けられてもせいぜい半年ぐらい。そんな私がモデルでいられたのはやっぱり好きだったからなんですよね。せっかく見つけられた居場所を失いたくなかった。だからこそ不安だったんです。ずっと悩んでたけど、私の頭にあるのは卒業よりも“卒業を選ばないためにはどうするか”ということでした」
若手たちの勢いが増していくなかで、ゆまちさんはeggモデルであり続けた。2010年代前半になる頃には古着をMIXさせたファッションも流行し、見た目におけるギャルの在り方も様変わりしていた。
それでもゆまちさんのスタンスは変わらない。本誌では「ギャルが消滅しないようにゆまがギャル文化を盛り上げていきたい!!そのためにも、ゆまはずっとギャルで居続けようと思ってるよ」とコメントを寄せていたこともあった。
「ギャルは強くてかっこいいっていうのが、私の中のイメージなんです。eggのキャッチコピーは“GET WILD & BE SEXY”でしたけど、まさにそういう女性に惹かれていたんですよね」
◆「好きなことをしていたい」ギャルモデルからパチスロ演者へ
高校時代に憧れていたギャル文化が失われないようモデル業に奮闘していたゆまちさんだったが、徐々に“やるべきことはすべてやりきった”という感覚も芽生えていったという。
そこでモデル以外の道について考えるようになっていく。元々仕事が続かない性格だったこともあり、好きなことでなければならないという思いも強い。そこでゆまちさんの興味を引いたのが、パチスロ関連の仕事だった。
「ずっとパチスロが好きだったんですよ。大好きすぎてその日撮影したギャラを使い果たしちゃうぐらい(笑)。本当にずっと打ちにいってたから、パチスロの仕事ができたら楽しいだろうなって」
eggモデルデビューを果たしてから6年9ヶ月。ゆまちさんは新たな道へ進むことを決意した。
卒業後、美容室の受付をやりながら、パチスロ系番組や来店イベントに出演するなどパチスロ演者としての活動をスタート。“元eggモデルのゆまち”という個性を活かしながら、パチスロの魅力を届けていった。
◆ギャルファッションは「装備」。いくつになってもぶれない愛情
こうしてモデル以外の仕事も始めたゆまちさんだったが、ギャルでいられる環境に身を置くことはやはり徹底している。
「ギャルに出合っちゃったから。もうそうじゃない自分には戻れないんですよね。化粧を薄くしてみたこともあったけど、それだとやっぱりテンションは上がらないし、笑顔でいられないし、モチベーションも下がっていく。私にとってギャルファッションは 『装備』。社会で闘っていくために必要なものなんです」
その後、事務所を独立してフリーランスとなったゆまちさん。2020年には結婚と出産も経験し、一児の母になった。今は家庭のことを第一に考えているという。
子育てを優先しながら仕事を続けていけたら……そう語りながらも、仕事に対する考え方は一貫していた。
「やっぱり自分が好きだと思えることをやっていきたいですね。そうじゃないと続けていけない性格なので。それはegg時代から一番大事にしてることかもしれません。あと、今はTikTokやInstagramでファンの方ともコミュニケーションがとりやすいので、今でも応援してくれる人たちに恩返しできる何かを見つけていきたいです」
好きなことに対する情熱は人一倍強い。ゆまちさんの揺るぎない芯の強さに、筆者はとても惹かれていた。
<取材・文/奈都樹、撮影/藤井厚年>
【奈都樹】
1994年生まれ。リアルサウンド編集部に所属後、現在はフリーライターに。『リアルサウンド』『日刊サイゾー』などで執筆。またnoteでは、クォーターライフクライシスの渦中にいる20代の声を集めたインタビューサイト『小さな生活の声』を運営している。
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