飼い犬に「骨付きチキン」を与え病院送りに…“ペットの人間扱い”を手放しに歓迎できない理由

人間とペットの親密化が加速 「ペットにとってマイナスに働く場面もある」と警鐘も

記事まとめ

  • 人間とペットの親密化が加速しているが、ペットにとってマイナスに働く場面もあるよう
  • ペットを溺愛する飼い主に対し「いき過ぎた行動もみられる」と獣医師が警鐘を鳴らす
  • ペットのためを思ってあげたサプリが健康被害に繋がることもあるのだそう

飼い犬に「骨付きチキン」を与え病院送りに…“ペットの人間扱い”を手放しに歓迎できない理由

飼い犬に「骨付きチキン」を与え病院送りに…“ペットの人間扱い”を手放しに歓迎できない理由

佐藤貴紀氏

ペットは家族”と言われて久しい。
 数十年前であれば庭に放し飼いにされた犬など、さほど珍しい存在ではなかったが、現在ではよほどの郊外でなければそうした光景に出くわすこともないだろう。

 このように、人間とペットの親密化は加速している一方、飼い主の側が理解しているつもりで行っていることがペットにとってマイナスに働く場面もある。

 日本に100名ほどしかいない循環器学会認定医の資格を持つ獣医師であり、VETICAL動物病院の佐藤貴紀氏は、「愛情を持ってペットに向き合うのは素晴らしいこと」としつつも、ペットを溺愛する飼い主の一部に対し「いき過ぎた行動もみられる」と警鐘を鳴らす。

◆骨付きチキンを丸ごと飲んでしまう犬

「ペットを人間と同じように愛するのは大賛成なのですが、何でもかんでも同じにしないといけないと思っている飼い主も多いなという印象があります。12月のクリスマスシーズンに運ばれてくるわんちゃんに多いのが、骨付きチキンを丸ごと飲んでしまったケースです。人間のパーティか何かで出た骨付きチキンを、そのままあげてしまったと言うんです。さすがに骨までは食べられないので、院内で内視鏡でみて取り除くことになります。同じく、焼き鳥の誤飲もあります。人間は肉を食べて串は食べられないことを知っていますが、わんちゃんにはわかりません。食道や胃袋を串で傷つけてしまうこともあり、非常に危険です」

◆「ペットが朝食抜き」だから自分たちも…

“人間扱い”という愛情のかけ方がありがた迷惑になるのは、たとえばこんな場面だ。

「飼い主が自分のかじったものをあげる、飼い主の顔を舐めさせ続ける、一緒に寝る……などの行動は、心情的にはわかるものの、人畜共通感染症や寄生虫などのリスクになり得ますので、おすすめしません。人間とペットを本当の意味で対等に扱うというのは、存外難しいかもしれません。これは少しほっこりした話ですが、あるペットの手術が決まっていて、『手術があるため、朝ご飯は抜いてきてください』とお伝えしました。すると、ご家族全員が朝食を抜いて手術に臨まれたご家庭があります。ペットだけ朝食を抜かせるくらいなら全員で、ということだと思うのですが、ご家族もしっかり栄養と摂られたほうがいいと思います(笑)」

◆ペットのためを思ってあげたサプリが健康被害に繋がることも

 情報の洪水時代ともいえる現代、ネットを漁ればどんな飼い主でも情報に行き当たるが、そのほとんどは出処不明のものだ。ペットを思うが故に、誤った情報に踊らされるケースも散見されるという。

「性質のよくわからないサプリメントを『身体にいい』と信じて大量にあげる飼い主も少なくありません。よく成分を読むと、製品名が異なるだけで中身が重複していることもあり、一歩間違えば健康被害に繋がることもあります。純粋な『やってあげたい』という動機によるものであっても、結果的にペットを痛めつけることになりかねないので、確かなエビデンスを持っている獣医師を頼ってほしいと思います」

◆「保健所に連れていきたい」という相談も

 また、ペットに対する「かわいい」という感情だけが先走り、実態を知らずに飼い始めるパターンも要注意だという。

「よくある相談としては、『こんなに泣き声がうるさいと思わなかった』『うんちが臭くてびっくりした』というライトなものから、『思ったより飼育費用がかかって困っている』『病気になってどうしていいかわからない』という重たいものまでさまざまです。いずれも、動物の実際を知らずに飼い主になってしまったことによるもので、場合によっては飼育放棄に繋がりかねない深刻なものです。事実、もてあましたペットを『保健所に連れていきたいのですが』という相談に出くわしたこともあります」

 獣医師である以上、ときに非情な提案をしなければならない場面もある。

「病状が重く、ペット本人がつらくて仕方ない場合は、残念ながら安楽死を提案しなければならない場面もあります。飼い主になるというのは、良い局面ばかりではなく、ときにつらい選択をしなければならないこともあるのです。逆に病状はそこまで重たくなくても、病気になってつらそうな姿をみた飼い主が『安楽死させたい』ということも稀にあります。私たちは『一般的なケアで維持が可能なものなので、諦めないでください』とお伝えするようにしています。かわいいペットのつらそうな姿をみて一時的に出てしまった言葉だと思いますが、とても悲しい気持ちになります」

◆多くの犬を救うため、専門を極めることに

 獣医師は常にペットの生き死にに関わる続けるシビアな仕事だ。佐藤氏が獣医師を志したのは、中学生時代にさかのぼる。

「小学生のころから飼っていた犬がいました。私が中学生になると、後ろ足が動かなくなり、四足歩行が不可能になりました。獣医のところへ連れていきましたが原因がわからず、家族で途方に暮れ……。そのとき、ペットの病気を治して生命を救う仕事に取り組みたいと思ったのです。幸い、家族でマッサージなどのケアを行ったことで、愛犬は生き延びました。動かなかった足も徐々に動かすことができるようになりました。大学の獣医学部に入学してからも頑張ってくれて、研究室で愛犬の相談をしたところ、神経科の専門医から紹介された薬によってすっかり病状が良くなったのです。そのとき、専門性があることの強みを身をもって感じました。犬の死亡原因は1位ががん、2位が心臓病。私は、循環器のスペシャリストとして、多くの犬を救えるように研鑽を積む道を選びました」

◆獣医師は「動物全般を診る」からこそ

 獣医師という1つのライセンスで診る動物は、実に多種多様だ。だからこそ、佐藤氏は専門性を求めた理由についてこう語る。

「医師が人間を診るのに対し、獣医師は動物全般を診ます。もちろん、すべての動物に精通して、救える獣医師になれればそれが最も素晴らしいでしょう。しかし現実には、それぞれの動物は臓器の形状も身体の構造もまったく違い、それは不可能です。私は、守備範囲を広く浅く設定するのではなく、犬猫に限定しました。困っている犬猫と飼い主のために、なかでもとりわけ重要な臓器である心臓とその周辺についての知識を活かしたいと考えたのです」

 佐藤氏はかつて外科の執刀も行っていたが、手術が必要になる状態にいく前に健康状態を立て直すことの必要性を感じ、現在は循環器内科の領域で犬猫を診ている。

◆人間と犬猫で共通する部分も多い

 犬猫の健康を保つ秘訣とは、どのようなことか。

「先ほどは、意図的に人間と犬猫を分けて扱わなければならない場面があるというお話をしましたが、健康を考えるうえでは共通する部分が多いと感じます。たとえば、人間においても歯周病と全身症状の関連性は明確になっていますが、これは犬猫においても同じです。

 くわえて、特に犬などは、床を舐めることも多いので、より入念な歯周ケアが必要となっています。あるいは、肥満がよくないことは人間も犬猫も違いがありません。基本的に、犬猫は腹八分目を知らないので、与えれば与えただけ食べてしまいます。しかし脂肪が増えれば血管が増幅しますし、そもそも肥満は免疫力を下げますから、病気にもなりやすくなってしまうんです」

◆小型犬でも「散歩したほうが良い」

 近頃は新型コロナウイルス感染症の蔓延によって“巣ごもり”に国民が慣れた感があるが、これについても佐藤氏は慎重に考えるべきではないかと話す。

「よくあるのは、『うちは小型犬なので、散歩は必要ないです』という誤解です。確かに感染症などに注意しなければなりませんが、外を歩くことによってストレスを解消する効果も期待できますし、循環や代謝もよくなります。それに、ずっと自宅にこもっていればウイルスの危険がないと考えるのは間違いで、どこで感染するかわからないのです」

◆高齢者は「死後の預け先をどうするか」を考えるべき

 数十年前と比較し、2倍にもなったといわれるペットの寿命。高齢者がペットを飼う場合、飼い主の寿命を超えて生きるペットが珍しくなくなった。こうした問題について、獣医師の視点からどのように考えるのか。

「ペットの寿命の延伸についてはさまざまな要因があると思いますが、やはり医療の発展と栄養の改善だと私は考えています。昔は人間が余らせた味噌汁にご飯をかけた猫まんまを食べさせるのが一般的でしたが、現在は栄養学の観点から考え込まれたペットフードが多数登場していますよね。それらのなかには手放しに良いと言えないものもありますが、一定程度、健康に寄与しているのだろうと考えています。

 高齢の飼い主が先に寿命を終えてしまうという問題についてはよく指摘されますが、私は高齢者であってもペットを迎えることに問題はないと考えています。むしろペットを愛でることでQOLが上がり、飼い主の生きがいに繋がる場合も多いのです。きちんと考えるべきなのは、自分の死後、ペットの預け先をどうするかということです。親戚の家だったり、ペットの介護施設だったり、各々の選択で良いと思いますが、金銭面を含めてそのための準備を整えることこそ、ペットへの愛情なのではないかと考えています」

 幼き日に経験した愛犬の闘病・介護生活と、対峙した生命の物語を目に焼き付け、一心不乱に獣医師への道をかけ進んだ佐藤氏。だからこそ氏の指摘は、漫然と描く“ペットとのハッピーライフ”をときに打ち砕く。それなのに、飼い主はその言葉に首肯せざるを得ない。それは専門家という神壇からではなく、ペットを愛する同志の目線で紡ぎ出す真心を感じ取れるからではないだろうか。

<取材・文/黒島暁生>



【黒島暁生】

ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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    で、記事では1番の言ってる事とは真逆で犬や猫は人間とは違うので同じ扱いをして溺愛しちゃいかん、もっと理解して接しなさいと言っておる。例えば犬が喜ぶからと言って骨付きの鶏肉とか与えると骨ごとバリバリ食べてしまって骨が喉に突き刺ささって大変な事になるとかウチにも野良猫の居候が一匹居るんだけど総合栄養食をあげても気に入らなくて口にしないで自分の好きな食べ物しか口にしないので美味しいものをと思って出すんだけどやっぱり栄養が偏って病気がちになるので猫の為を思ったら嫌がっていても総合栄養食を食べさせるべきだと思う。美味しいのをくれないと解るとオレはこの世で一番不幸なニャンコだ…と言う表情とオーラを出してこちらを見るんだけど騙されないぞw;本当に不幸に見えるから役者なノダ…

  • 1

    ペットの<溺愛>と飼っている人の<ボケ>がダブっているケースがあるようで、見ていて、ウンザリ、ガッカリします。 この記事のように、ペットを人間扱いして、可愛がるのはまだしも、小さな孫がいるのに、孫の相手をせず、ペットにべったりの中高年を見ると、腹が立ちます。 日本も豊かになった証拠ですかね。

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