世界的にも“異常”なワールドカップアジア予選。大スポンサー「中国と中東」の政治力による影響か

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AIざっくり要約

  • 日本代表はミャンマー戦とシリア戦で5-0で快勝し、24人の選手を起用した。
  • AFC加盟国46カ国がワールドカップ出場を争うが、方式は極めて複雑で、試合数が多過ぎるとの指摘がある。
  • 政治的影響が予選方式作りに影響しているのではないかとの指摘がある一方、選手の負担軽減が最優先事項だと筆者は結論づけた。

実験的な機能のため、正確性を欠く可能性があります。記事本文と併せてご確認ください。

世界的にも“異常”なワールドカップアジア予選。大スポンサー「中国と中東」の政治力による影響か

ミャンマー戦でミドルシュートを決めたが、負傷によりチームから離脱した鎌田大地

FIFAワールドカップの出場権を懸けた戦いが始まった。アジア2次予選でミャンマー、シリア、北朝鮮と同組になった日本代表は11月16日にミャンマーと、同21日にシリアと対戦。いずれの試合も5-0で快勝して好スタートをきった。
 戦前から負傷者が相次ぎ不安視されたが、上田綺世らの活躍により不在者による戦力ダウンを感じさせることなく、むしろ層の厚さを感じさせた戦いぶりを見せてくれた。選手らを中心とした日本代表は相変わらずの好調で、今後にも期待を持てる内容だった。しかし、周囲を取り巻く事情の問題点が浮き彫りとなった。

◆質を落とさず叩けるメンバーが“30人超”

 これまでの主力から8人も離脱した状態で戦うことになった日本代表だったが、ミャンマー戦とシリア戦で先発メンバーを9人も入れ替え、2試合で24人の選手を起用して勝利した。どちらの相手も明らかに格下ではあったが質を落とさずに戦うことができていた。招集外や離脱者を加えると、同等のクオリティでプレーできる選手が30人超いることになり、現在の日本代表の競争力の高さと選手層の厚さを証明する結果となった。

 順調に強化を進めている日本代表だが、今回は試合とは別の問題が浮上してしまった。

 ひとつはアウェイのシリア戦が日本国内で見られなかったことだ。アジア2次予選においてはホームとなるチームに放映権がある。次ラウンドの最終予選はアジアサッカー連盟(AFC)が放映権を保持し、日本国内における放映権はすでにDAZNが購入してライセンスを得ている。しかし、2次予選におけるアウェイ戦は北朝鮮戦、ミャンマー戦とまだ2試合を残しており、今回のシリア戦のようなことが起こる可能性を秘めている。

◆シリア戦は無理して放映しなくてよかった?

 ワールドカップ本大会のときも放映権料の高騰が話題になったが、いつまでも値段が上がり続けるというのもおかしな話であり、いずれかは右肩上がりではなくなる。FIFAはそれでも放映権料による売上高を上げようと、次大会から出場国を増やすという決断をした。

 そういった値上がりの理由があるならまだしも、今回のシリア戦においては理由なき値上げを要求されたようなもので決して納得のいくものでもない。本大会であれば賞金という形でチームや選手に還元されるが、2次予選においてはその使途も不明。理由なき高騰に歯止めをかけるという意味では、支持できる決断だったように思える。

◆ワールドカップ出場国が48カ国に。すでに弊害が

 32カ国から16カ国増えた、48カ国が本大会への出場権を得られることになり、FIFAは次大会で放映権料や広告収入での増収を見込んでいる。大会全体でこれまでより16試合増えることになるが、1チームの最大試合数はこれまでと変わらず7試合で、出場選手の負担にならないと主張している。

 FIFAはまだ選手の負担を考慮しているが、その選手らが所属するリーグやクラブなどの主催者も同様に増収のために試合数を増やそうと考える傾向がある。そのためスケジュールは過密となり、負担のかかった選手らはあえなく故障するという事態が多発。移動による負担もある現在の日本代表の面々がまさにその状況に陥っており、シリア戦後に離脱した鎌田大地を含めると9人の選手が悲鳴を上げていることになる。

 実際に選手からも2次予選のあり方に対して疑問符の声が上がっており、AFCは予選方式について見直しを検討すべきである。

◆AFC加盟国のFIFAランキングは?

 AFCの加盟国は現在47カ国となっている。しかし、その中で北マリアナ諸島はFIFAに加盟していないため、ワールドカップ予選は46カ国で出場権を争っている。2026年大会の予選に参加している国とそれぞれのFIFAランキングは以下のとおりとなっている。

1.日本:20位(18位)
2.イラン:22位(21位)
3.オーストラリア:27位(27位)
4.韓国:28位(24位)
5サウジアラビア:54位(57位)
6.カタール:59位(61位)
7.イラク:70位(68位)
8.アラブ首長国連邦:72位(69位)
9.オマーン:73位(72位)
10.ウズベキスタン:74位(73位)
11.中国:80位(79位)
12.ヨルダン:82位(82位)
13.バーレーン:86位(83位)
14.シリア:94位(92位)
15.ベトナム:95位(94位)
16.パレスチナ:96位(96位)
17.キルギス:97位(97位)
18.インド:99位(102位)
19.レバノン:100位(104位)
20.タジキスタン:110位(109位)
21.タイ:113位(112位)
22.北朝鮮:115位(115位)
23.フィリピン:135位(138位)
24.マレーシア:136位(137位)
25.クウェート:137位(136位)
26.トルクメニスタン:138位(141位)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
27.香港:149位(150位)
28.インドネシア:150位(145位)
29.台湾:153位(152位)
30.モルディブ●:155位(161位)
31.イエメン:156位(156位)
32.アフガニスタン:157位(154位)
33.シンガポール:158位(155位)
34.ミャンマー:160位(158位)
35.ネパール:175位(173位)
36.カンボジア●:176位(178位)
37.マカオ●:182位(187位)
38.モンゴル●:183位(190位)
39.ブータン●:185位(182位)
40.ラオス●:187位(188位)
41.バングラデシュ:189位(183位)
42.ブルネイ●:190位(191位)
43.東ティモール●:192位(197位)
44.パキスタン:201位(193位)
45.グアム●:203位(203位)
46.スリランカ●:204位(202位)

※順位は予選の組み分け決定直前の2023年7月20日付けのランキングで、( )内は10月26日付けのFIFAランキング。●は1次予選敗退

◆ワールドカップ予選、試合数が多すぎる問題

 次大会からAFCにおける出場権は4.5から8.5に増枠された。1次予選は27位以下のチームが10組に分かれてホーム&アウェイで2試合を行い、勝った10チームが2次予選に進出する。その10チームにFIFAランキング上位26カ国が加わり、4チームずつに組み分けされた10グループでリーグ戦を行う。その上位2カ国が3次予選に進出。その後、6チームずつの3グループに組み分けされてリーグ戦を行い、上位2チームが出場権を獲得できる。残りの2.5枠は3次予選で3、4位になった6チームによって争われることになる。

 つまり、2次予選から参戦の日本でも出場権を得るまでに最低でも16試合も行う必要がある。

◆なぜ半数以上がシードされているのか

 55カ国が参加するヨーロッパはシードによる予選免除などはないが、4〜5チームで12グループに分けられてリーグ戦を行う形式で、出場権の獲得までは最低でも6〜8試合となっている。南米は参加国すべての10チームによるリーグ戦が行われるため、出場権を得られるまでに18試合となっている。アフリカは54カ国によって9.5枠を争うことになるが、今回から6チームずつの9グループに分かれるリーグ戦に変更され、最低10試合で出場権を得られることになった。北中米は3カ国に開催国枠が与えられることになり、異例の形式になる。ただ、前回大会まででいえば3ラウンド制の予選となっており、本大会出場常連国のメキシコやアメリカなど上位5チームは最終予選までシードされていた。

 他地区と比較すると、いかにアジア予選が世界とかけ離れているかがわかる。加盟国数の少ない南米には2グループに分けるくらいしか試合数を減らす施策はないが、加盟国数の多いアジアはヨーロッパやアフリカに習って試合数を大幅に削減すべきだった。仮に、そのまま3ラウンド制を維持するにしても、シード国数を絞って3次予選からの参加にすべきだ。そもそも半数以上がシードされるという状況には大きな疑問符をつけざるを得ない。

◆「政治的な要素」が歪な予選形式の背景に?

 推測の域を出ないが、アジアの予選方式には政治的な要素が大きく関係しているように思う。AFCの現・会長の出身国はオマーンだが、その前は中国出身で、2つ前はカタール出身者となっている。このように近年のAFCは中東勢と中国によって、その権力が争われてきた経緯がある。彼らのような権力者たちはもちろん自国の本大会出場を願っており、少しでも自国出場の可能性が広がるように考えられた結果が、現状の予選方式なのだと推察する。

他の連盟に比べると、2位や3位以下でも次ラウンドに進めるチャンスがあまりにも多い。これは中堅チームにより多くのチャンスが与えられることと同義である。今一度、先述のランキング表を見てほしい。中堅にはどのような国がならんでいるのかを。

加えて、FIFAからの影響も感じ取れる。昨今のFIFAのスポンサーに中東や中国が増えているのは誰の目にも明らかである。そういったスポンサーの意向が少なからずとも影響しているのではないかと邪推してしまう。

このようにさまざまな影響はいつの時代もあるとは思うが、最も大切なのはその大会で素晴らしいプレーを見せてくれる選手たちである。選手が壊れてしまうと、すべてが成立しない。そのことを再認識したうえで、次回からの予選が構造改革されることを願ってやまない。

<TEXT/川原宏樹 撮影/Norio Rokukawa>



【川原宏樹】

スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる

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