人は気づかぬうちに“自分らしさ”を失っていく。漫画家・鳥飼茜インタビュー

人は気づかぬうちに“自分らしさ”を失っていく。漫画家・鳥飼茜インタビュー

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喪失の先に待つのは「生」なのか、あるいは「死」なのか。それとも……。これまで鋭い視点で男女の性差を浮き彫りにしてきた漫画家・鳥飼茜氏が、新境地に挑む新作が『サターンリターン』だ。主人公で小説家の加治理津子は、自ら命を絶った親友・アオイの死の真相に迫るべく、実家、友人、ホストクラブと、アオイと縁のある人・場所を尋ねていく。他人の人生の断片を拾い集めていくその過程は、一方で自分自身の人生とも向き合うことでもあり――。

 “喪失”をテーマにした本作。「今までの作品のなかで群を抜いて手応えを感じている」と力強く語る彼女に作品の見所を聞いた。

――今作で力を入れた部分を教えてください。

鳥飼:“喪失”をいろいろな角度から描くことです。親友のアオイは「失恋」によって予告していた自殺を遂行し、生前の彼と親交があった主人公の加治理津子は、彼を死の手前からある意味で見放していたことに自責の念を感じ、その喪失と向き合うことになります。これは『死』という極端に大きな出来事によってですが、そうでなくても私たちは、就職、結婚、妊娠といった人生のイベント、もっと言うと日常の些細な出来事からも「こういう場面ではこうあるべき」という常識や都合によって、本来的ななにかを失っていっていると思うんです。

 今この場にいる、私とインタビュアーさんと編集さんは、偶然居合わせた訳でもフリートークを楽しむために約束した訳でもなく、都合によって集まって、都合によって話をしているわけですよね。

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