「夫だから/嫁だからこうすべき」という呪縛から解放され自由を得られた

「夫だから/嫁だからこうすべき」という呪縛から解放され自由を得られた

鳥飼 茜氏

男女のすれ違いや女性の心の機微を巧みに描き、「何か見透かされている」と、ときに世の男性を戦々恐々とさせてきた漫画家・鳥飼茜氏。氏がこのたび、“喪失”をテーマに、友人の死や夫婦の在り方に切り込んだ新作が『サターンリターン』だ。主人公は小説家の加治理津子。宣言通りに自ら命を絶った親友・アオイの死の真相に迫るべく、彼と縁のある人や場所を訪ねていく。他人の人生の断片を拾い集める過程は、自分の人生と向き合うことでもあり、同時に、他者との間の信頼を揺るがせる一面も持っている。

◆社会が望む夫婦の形を手放すことで、信頼が担保される

「最初から『喪失について描こう』と思っていたわけではなく、日々のなかで何かを失っていく感覚を無我夢中で描くうちに決まっていきました。親友だと思っていた人が突如この世からいなくなって、『本当はどんなことを考えていたのか』『彼にとって私の存在意義はなんだったのか』という疑問が理津子を動かします。実は私自身も大切な友人を自死で失ったことがあるんです」

 友人の痕跡をなぞるほど、“距離感”がわからなくなっていったと語る。

「人が死ぬと、スマホ、メール、写真といった、“物”だけが残されます。すると、その痕跡から推測が生まれる。仮に『ずっと好きです』という自分に向けた文章が残っていたとしても、書いた本人がこの世に存在していない以上、それが本心かを証明する手立てはありません。

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