消費増税前にトイレ紙を買う行列は、崩壊寸前の日本から脱出しようと箱舟に乗り込む列だ/鈴木涼美

消費増税前にトイレ紙を買う行列は、崩壊寸前の日本から脱出しようと箱舟に乗り込む列だ/鈴木涼美

増税前の駆け込み購入で空になったトイレットペーパーなどの商品棚と、品薄を伝える張り紙(9月30日、東京都品川区)写真/時事通信社

―[鈴木涼美の連載コラム「8cmヒールで踏みつけたい」]―

◆自民からの逃走

 フリーになった最初の年は区民税と保険料の高さに苦しんでいて、そんな時AV時代の友人で今も昔も元気に体を売って私の3倍稼いでいる同い年の女と歌舞伎町の寿司屋で口論になった。「うるさいな、税金も払ってないくせに!」と私が言うと、矢庭に「払ってるし! 消費税! たばこ税! 酒税!」と言い放たれた。

 夜の世界では、大金を稼ぎながら住民税も所得税も保険料も年金も未納の人が少なくないし、ソープ嬢やパパ活嬢らの所得は額面上ゼロのこともあるし、貧困統計をいまいち信用できないのもそのせいだ。そんな隠れ富裕層にも降りかかる消費増税は一瞬悪くない気もしてしまうのだけど、それは多分私があの時の彼女のドヤ顔に圧倒されているだけだ。

 今月1日に消費税が10%へ引き上げられたことを受け、各情報番組などでは軽減税率の対象品目やポイント還元などのわざととしか思えない猥雑な仕組みの解説に時間が割かれた。

 増税の是非より絵になる店頭を映す浅はかなマスコミも、もっと大企業や資本家から徴税しろという非難と法人税が高いと企業は国外に出ていくという反論が繰り返される光景もいつも通りなのだけど、今回はそれ以上に、駆け込み需要の高揚とそれに対する冷笑の週末と思えた。

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