<中森明夫×島田雅彦対談>自分を徹底的に微分して真実を見極めることで、 私小説は普遍的な物語になりうる

<中森明夫×島田雅彦対談>自分を徹底的に微分して真実を見極めることで、 私小説は普遍的な物語になりうる

二人が対談したバー・風花には今も「中上」の文字が書かれたボトルが残っている

80年代に新人類の旗手としてデビューを飾り、作家・アイドル評論家として活躍を続ける中森明夫氏と、同時期に日本のポストモダン文学を牽引し、現在は芥川賞の選考委員も務める作家の島田雅彦氏。デビューから三十余年を経た2019年、中森氏が『青い秋』、島田氏が『君が異端だった頃』、ともに自伝的私小説を上梓した。還暦を前にした二人が、なぜいま私小説を書いたのか? 二人と縁が深い伝説の作家・中上健次のボトルが今も残る新宿の文壇バー・風花で語り合った。

◆『青い秋』では青いままに人生の秋を迎えた中高年の“いま”を描いた

島田:『青い秋』、おもしろく読ませてもらいました。自分で書いたような感覚になったりして(笑)。

中森:『君が異端だった頃』に抱いた時代の共有感は、半端ないものがありました。島田さんとは同世代なうえ、世に出たのもほぼ同時期ですからね。

島田:『青い秋』というタイトルも二度目の思春期というか、中高年の思秋期……そういうものを、ずっと引きずっている感覚が自分にもあります。

中森:「青春」とは中国起源の言葉で「朱夏」「白秋」「玄冬」と続く。いまの自分は「白秋」のはずですが、僕は妻子も持たず、一人暮らしで、青いままだと思う。そして、僕ほどではなくても、成熟しきれないまま「青い秋」に留まっている人って実は多いのでは、と思い至った。

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