コロナ禍において、38年前に描かれた石原慎太郎『亡国』から考えること

コロナ禍において、38年前に描かれた石原慎太郎『亡国』から考えること

亡国ー日本の突然の死(上・下巻) 石原慎太郎著 角川書店

◆先見の明があった石原慎太郎の小説『亡国―日本の突然の死』

 SARS-CoV-2、通称、新型コロナウイルスによる感染症COVID-19が世界を瞬く間に混乱の渦に巻き込んでからはや数か月が経った。今回、ここまで感染が拡大した原因はウイルスの持つ特性が大いに関係しているはずだが、もう一つ根本的な原因をあげるとするならば、脅威が眼に見えないこと、それに尽きるだろう。

 当たり前かもしれないが、ウイルスは肉眼で見ることはできない。目に見える形で危機が迫ってくるのならともかく、目にも見えず音も臭いもないリスクをヘッジしろと言われても、なかなか人は本気になれないものだ。この人間心理を利用して、新型コロナウイルスは世界中を瞬く間に侵略した。気づいたときにはもうどうしようもなく手遅れになっているくらい素早く、大胆に。

 国を揺るがす見えない脅威が国家、ひいては世界を襲ったとき、政府と国民は一体どうなってしまうのか。石原慎太郎著『亡国 -日本の突然の死-』(角川書店 1982年)で書かれているのは、まさにその果て、そして考えうる中で最悪の未来だ。

◆舞台は80年代。生物兵器に侵された日本

『亡国』の舞台は80年代、日本。ソビエトの軍事力はアメリカを凌駕し、いよいよ世界の覇権を担うべく行動を開始する。

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