錦織圭、ガスケを退け決勝へ。10年前の完敗があって今がある


 同時に胸裏に甦ったのは、10年前の、まだ何者になるかすら不確かだったころの自分。たしかにあのころのほうが、若さゆえの思い切りのよさはあったかもしれない。だが、今はいい意味で落ち着き、いかなる状況にも動じることなく、試合を迎えられている自分がいる。
「いろいろと経験ができて、今があるんだな」
 そんな感傷をも胸の隅に抱えながら、彼は若いチチパスを圧倒する。
 その先で迎えた準決勝の対戦相手は、奇しくも、10年前の若かった……つまりは未成熟だった日の自分が敗れた、ガスケであった。
 初対戦での敗戦以降も5連敗を喫し、通算成績で2勝7敗と負け越すガスケとの対戦を、錦織は「チャレンジしていけるので楽しい」と言い表した。弱点が少なく、繊細なタッチから多彩な技を繰り出す天才肌のショットメーカーは、錦織がどこか自分と似た匂いを嗅ぎ取るテニスプレーヤーでもあるのだろう。
 その相手との10度目の対戦は、両者ともに高い集中力で自身のサービスゲームを獲得しあう、緊迫の幕開けとなる。
 ひとつの綻(ほころ)びが趨勢(すうせい)を決めかねない張り詰めた空気のなか、先にチャンスをつかんだのは錦織のほう。だが、手にした3つのブレークポイントを、いずれもガスケの高質のプレーに阻まれる。嫌な予感も胸をよぎるなか、第1セットはタイブレークへとなだれ込んだ。

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