甲子園取材後記。テレビには映らない広島新庄コーチの「神ノック」

 夏の甲子園の取材をしていると、テレビには映らない貴重な場面に遭遇することがある。今年の大会でいえば、広島新庄の試合前のシートノックがまさにそうだった。

 思わずうっとりしてしまった。

 甲子園球場の茶色いグラウンドに、きれいな回転をした白球が弾む。選手たちのフィールティングも見事だったのだが、何よりもノッカーのバットさばきが美しかった。ヘッドをしならせ、バットを内側から出して、自分の意図する打球をそのまま打っている。選手の正面を中心に決して難しい打球を打つわけではないのに、見ているだけでなぜか心地よさが感じられた。

 内野ノック、外野ノックを打ち終えると、最後はキャッチャーフライ。1球打ち損じてバックネットに当てたものの、次に打ち直した打球は約6秒間、甲子園の空を漂ったのち、ホームベース付近でキャッチャーが構えたミットに収まった。

 こんなノッカーにノックを打ってもらえたら、選手はうまくなるよなぁ......と思っていたら、そのチーム・広島新庄は初戦から堅守を発揮して勝ち進んだ。3回戦で木更津総合(千葉)に0対2と惜敗したものの、3試合で失策はわずかに1。堅い守りを強く印象づけた。

 遊撃手の田中亮太はこう証言する。

「高校に入ってから、こんなにノックがうまい人がいるんだとビックリしました。試合前は自分たちの捕りやすい打球を打ってくださるんですが、いつもは捕れるかギリギリのところも打っています。普段から守備はよく練習しているので、甲子園ではすごく守りやすかったです」

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