病室での断髪式。異色のモンゴル出身力士・時天空、涙の引退秘話

 大相撲秋場所(9月場所)の新番付が発表されたその日、奇しくも引退会見に臨んだ時天空。その頭には、力士の象徴である"髷(まげ)"はなかった。

 小結まで務めた男の秋場所の番付は、三段目東87枚目。ここまで番付を下げてしまったのは、悪性リンパ腫(※)の治療のため、昨年の九州場所(11月場所)から5番所連続の休場を余儀なくされたからである。
※血液がんのひとつとされる。首や脇の下のリンパ節が腫れたり、体の一部にしこりができたりする症状が出て、体全体の臓器を次第に侵していく病気。

 時天空が右脇腹に異変を感じたのは昨年7月、名古屋場所(7月場所)の頃だった。当初は「あばら骨にヒビがある」と診断されたが、その治療を受けても一向に痛みは治まらなかった。そして、9月の秋場所後に再検査を受けてみると、思わぬ事実が見つかった。

 悪性リンパ腫――力士生命どころか、自らの命をも脅かすほどの病であることが判明したのだ。

「うそだろ? オレが悪性リンパ種なんて......。きっと、何かの間違いなんじゃないか?」

 診断直後、36歳の現役力士は自らが侵された病を受け入れることができなかった――。

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