等々力の空に響いた大久保嘉人の叱責。フロンターレは真骨頂を示せず

 新たなヒーローが生まれそうな予感が漂っていた。

 鹿島アントラーズの1点リードで迎えた50分以降、一方的に相手を押し込んだ川崎フロンターレの攻撃をリードしたのは、19歳のMF三好康児だった。巧みにボールを引き出しては、密集する鹿島守備陣に果敢にドリブルで切れ込んでいく。59分にはMF小笠原満男をかわして、MF中村憲剛に決定的なパスを通すと、その直後にもDFふたりの間を抜く鋭いスルーパスをFW大久保嘉人に供給。わずかに合わなかったものの、この小さなアタッカーが示した高い技術と積極性は、川崎Fに歓喜を呼び起こすためのファクターになると思われた。

 試合中に何度も大久保に叱責を浴びながらも、三好は決して消沈することなく、むしろ「俺にボールをよこせ」とばかりにボールサイドに寄っては、攻撃に関与する意思を保ち続けた。それは、無名の若者が何者かになるための過程に必要な勇敢さである。その勇気に対するご褒美として、自らを怒鳴り続けてくれたチームの大先輩に、最後の最後に同点ゴールをアシストする――。試合を見ながら、そんなシナリオを思い描いていた。

 しかし、ヒーローなど簡単には生まれないのだ。鹿島の老獪な守備の前に、三好はついに何者にもなれなかった。

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