「毎晩、高い所から落ちる夢を見た」。斉藤和巳が語るリハビリの6年間

■シリーズ「もう一度投げたかった」──斉藤和巳(前編)
 天国と地獄、栄光と挫折、称賛と罵声──。

 プロ野球にはまったく異なる世界が背中合わせで存在する。だからこそ、多くの人が魅入られ、心奪われるのだ。しかし、この男ほど、ふたつの世界にどっぷり浸かった例はまれだろう。

 斉藤和巳──沢村賞投手を2度獲得した稀代のエースだ。最多勝も最高勝率も最優秀防御率も最多奪三振のタイトルも獲得した。2003年からの4年間で64勝を挙げたピッチャーは、しかし最後の6年間、一度も公式戦のマウンドに立つことなくユニフォームを脱いだ。3度目の肩の手術を行ない、リハビリにかけた日々──。沢村賞投手はどん底で何を考えたのか? 本人の言葉で「最後の6年」を振り返る。

◆何度も固辞した引退セレモニー

──斉藤さんが福岡で引退セレモニーを行なってから3年が過ぎました。いま振り返って、どんなことを思いますか。

斉藤 僕は引退セレモニーをやれる立場ではないと思っていました。当時は試合で投げることもなく、選手登録もされていません。だから、そんなだいそれたことはまったく考えてもいなくて、球団の方から「引退セレモニーを」と言っていただいたのですが......。

──オファーを何度も固辞したそうですね。

斉藤 はい。でも、最終的には「ファンのみなさんに直接気持ちを伝えるいい機会だから」との言葉を聞いて、セレモニーをしていただくことにしました。

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