遅くても大丈夫。健大高崎のチーム最鈍足選手が語る「機動破壊」

「機動破壊」は、今や高校球界で知らぬ者はいないほどのフレーズになった。群馬の健大高崎高校といえば誰もがそのチームスローガン「機動破壊」を連想し、ひとたび健大高崎の選手が出塁すれば、相手校も、観衆も、テレビカメラも塁上のランナーの動きが気になって仕方がない。甲子園には春夏合わせてまだ6回しか出場していないにもかかわらず、機動力を駆使した戦いぶりはすでに広く周知されている。

 だが、健大高崎の選手だからといって、スタメン9人全員の足が速いとは限らない。今春センバツで5番・三塁手として出場している渡口大成(とぐち・たいせい/3年)はこう語る。

「スタメンのなかで自分が一番遅いと思います。走れる選手ではないので......」

 50メートル走のタイムが5秒台や6秒台前半の選手がズラリとスタメンに並ぶなか、渡口のタイムは6秒8と高校球児としてごく標準的だ。だが、健大高崎の野球は足が遅いからといって、走ることは他の選手に任せて打撃に専念する......ということは許されない。渡口は「足が遅くてもやれることはある」と語る。

 センバツ初戦の札幌第一戦では、こんなシーンがあった。0対0で迎えた2回裏、先頭打者だった渡口は三塁手のエラーで出塁すると、三塁コーチャーの永渕遼(3年)に視線を送った。渡口によると「コーチャーの永渕がリードの幅を指示してくれるんです」。渡口がリードを取り始めると、三塁コーチャーを務める永渕が「もっと出て」などとジェスチャーで距離の指示を出すのだ。永渕は言う。

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