「もう戻れないと思った」森崎和幸が、苦境のサンフレッチェを救う

 机の上で震えているスマートフォンの画面を見て、驚きを隠せなかった。反射的に通話ボタンを押したが、あまりに久しぶりだったから、適切な第一声が思い当たらなかった。

 おそらく「どうしたの?」と、当たり障りのない言葉を発したように記憶している。相手は「一応、報告しておこうと思って」と切り出すと、「明日、練習場に行って監督と会ってきます」と話してくれた。

 電話の主は、サンフレッチェ広島のMF森崎和幸だった。

 冬の寒さがようやく緩み、春の陽気が感じられるようになってきた3月20日のことだ。その時点でリーグ戦4試合を消化していたサンフレッチェは、1分3敗で17位に低迷していた。

 昨年の5月に身体の不調を感じはじめた森崎は、その後も騙しだましプレーしてきたが、シーズン前のタイ遠征中に限界に達すると緊急帰国。その後は、練習場はもちろん、外出すらままならない状況が続いていた。それだけに、タイに出発する日を最後に途絶えていた森崎からの連絡は、苦しむチームにとっても明るい材料になるのではないか、と感じた。電話を切ってから、まるで冬眠から目覚めた熊みたいだなと、思わず微笑んでしまった。

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