前人未到の全仏V10。ナダル圧勝の原動力は「毎日の不安」にあった

 試合後にすばやく組み上げられる表彰台の側面には、円形の大会ロゴを数字のゼロに見立て、その横に「1」を添えた「10」の数字が描かれていた。

 優勝セレモニーでは、今大会を含む過去の優勝シーンの映像が巨大スクリーンに次々に映し出され、それは今しがたコート上で起きた、両手で顔を覆い赤土の上に仰向けで倒れ込むラファエル・ナダル(スペイン)の姿で締めくくられる。

"ラ・デシマ(La Decima)"

 スペイン語で「10回目」を意味するこの言葉は、フレンチオープン史上最高の偉業を称えるシンボルとして、テレビで繰り返し叫ばれ、SNSに溢れかえった。

「ナダルの10度目の全仏優勝なるか?」

 大会が始まる前から、今年のローランギャロスの話題はその一点に集中した。だが、当のナダルにとって、10という数字そのものには大した意味はなかっただろう。

「たしかに10は素敵な数字だけれど、僕のお気に入りのナンバーは9なんだよね」

 繰り返される「10度目への意気込み」について問われた彼は、照れくさそうな笑みを浮かべた。

「毎年ここに来るたびに、同じことの繰り返しのようでありながら、同時に違う大会でもある」とも彼は言う。

「僕の感情や状態も違う。だから僕は、何か特定のことに執着するということはない。僕が唯一、執着するのはベストを尽くすこと。結果は後からついてくるものだ」

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