【イップスの深層】中根仁が証言「木塚はイップスを認めずに克服した」

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連載第12回 イップスの深層〜恐怖のイップスに抗い続けた男たち
証言者・中根仁(4)

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2003年に現役を引退し、その後はスカウト、打撃コーチなどを務めた中根仁氏

 とあるローカル球場での高校野球の試合中――。どこにでもある日常にひびが入ったのは、投球をキャッチした捕手が投手に返球しようとした刹那(せつな)のことだった。

 両ヒザを地面に着けたまま、白球を握った捕手が右手を上げる。ところが、捕手は右腕を振り下ろしながら本来離すべきタイミングでもボールを離せず、そのままバランスを崩して前のめりに倒れてしまった。

 この光景をバックネット裏で見つめていた中根仁は「嫌なものを見てしまった……」と、冷や汗をにじませていた。15年間の選手生活を終えた中根はベイスターズの球団スカウトに転身し、高校野球の視察に訪れていた。現役時代に送球イップスと戦い続けてきた中根にとって、この捕手の挙動は他人事ではなかった。

「プロにもこういうキャッチャーがいましたからね。(返球するため)普通なら左足を前に出して投げるのに、右足を前に出して投げたり、タイミングが定まらなくてホームベースの前まで歩いてしまって『はよ投げぇや!』とヤジられたり……」

 ボールが指から離れない――。これもまた、イップス特有の感覚だろう。中根はこの高校生捕手を目当てに球場を訪れていたが、返球中に倒れ込むシーンを目撃して「プロでは難しいかもしれないな」と感じた。

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