田中恒成vs田口良一。一度は白紙も奇跡の実現へ。その軌跡を追う

示し合わせたかのように両選手は口を揃える。
「強い相手と戦いたい」
 両選手の半生は、まさに対照的だ。
 空手を習っていた田中は2006年、小学5年の時にボクシングに転向。その年は、当時20歳の田口がプロデビューしたシーズンでもある。
 ただ、高校4冠に輝き、アマエリートとしてスポットライトを浴び続けた田中と異なり、田口は後に世界チャンピオンとなって脚光を浴びるまで、雑草のように日陰の道を歩み続けている。
 小学生時代、イジメられっ子だった田口は、マンガ『はじめの一歩』に憧れ、「強さがほしい」とボクシングを志(こころざ)した。しかし、高校1年で入門したジムは、友だちとの遊びを優先したため、ほとんど通わずじまいに終わっている。

 そんな田口は高校卒業を控え、「もう一度ボクシングを」とワタナベボクシングジムの扉を叩く。本人は、それを”運”だと言う。
「高校時代、いつもJR京浜東北線で家に帰っていたのが、その日だけたまたま山手線で帰ったんです。ちょうど五反田駅で電車が止まった時、車内の窓から見えたのがワタナベジムでした。直感で『このジムに入ろう』と決めたんです。
 そのワタナベジムで、会長や内山(高志)さん、当時のトレーナーに出会えました。このジムでなければ、僕は世界チャンピオンにはなれなかった。

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