田中恒成vs田口良一。一度は白紙も奇跡の実現へ。その軌跡を追う

さらに後日、田中は名古屋から東京のワタナベジムに出向いて、田口の出待ちをして対戦が白紙になってしまったことを直接謝罪したという。
 対戦が叶わなかったことを、田口は「ビックリでした」と振り返るが、「白紙になってモチベーションが一度は落ちたんですが、しばらくしてIBF世界ライトフライ級王者ミラン・メリンド(フィリピン)との統一戦が決まり、気持ちの面で立て直しはできました」と再び前を向いた。
 田口はメリンドに判定勝ちして統一王者となり、2018年3月には田中が復帰戦をTKOで勝利。再び、両者は拳を交える機会が訪れるかのようにも思われた。しかし同年5月、ヘッキー・ブドラー(南アフリカ)と対戦した田口が判定負けを喫し、3年半もの間保持し続けたWBA世界ライトフライ級のベルト、さらにメリンド戦で手にしたIBF王者のベルトをも失ってしまう。

「メリンド戦は統一戦だったこともあり、モチベーションが高かったんです。ブドラーとの試合は、どこかフワフワしているような変な感じがずっとしていました。対戦相手の映像を見て、プロ32戦目にして初めて、『あ、いけるな』と思ったんです。今、思えば、あれが慢心だったと思います。
 試合当日、リングに上がってブドラーと対峙しているのに、『これから本当に試合が始まるのか?』と、どこか集中しきれませんでした。負けるべくして負けたなと」
 その日、田中は畑中会長の息子の試合を応援するため、静岡にいた。

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