田中恒成vs田口良一。一度は白紙も奇跡の実現へ。その軌跡を追う

しかし、その後は?

 ライトフライでは、減量がきつくなっているのは明白。きっと、すぐに王座を返上することになるだろうと、田口は思い悩む。くしくもジムの後輩、IBF世界ミニマム級チャンピオン京口紘人がライトフライ級への転級を決めていた。
「もちろん、リベンジしたかったです。でも、僕はワタナベジムに所属するボクサーである以上、ひとつのチームですから」
 多くの想いを飲み込み、田口は「長く防衛できないのであれば……」と、ブドラーと対戦する権利を後輩に譲った。
 一方、先が見えなくなった田口と反比例するように、骨折から復帰後の田中は完全な上昇気流に乗った。
 ロンドンオリンピックの金メダリスト鄒市明を破ってWBO世界フライ級王者に君臨した木村翔(青木)。2018年9月、田中はそんなもっとも勢いのあるボクサーに判定勝ちを収め、世界最速タイ記録プロ12戦目での3階級制覇を達成する。
 現役チャンピオンと、元チャンピオン。田口との対戦は、田中にとってはリスクだけが際立つ。夢は夢のまま。田中vs田口のドリームマッチは霧散したかのように思えた……。
 しかし、今年1月10日、田中の初防衛戦の相手が田口に決定したことが発表され、ボクシングファンは歓喜する。
 さらに周囲を驚かせたのは、対戦を打診したのが田口サイドからではなく、チャンピオンの田中からだったことだろう。

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