マリナーズ元スカウトが見た衝撃。「イチローはすべて揃っていた」

その瞬間、私は心の中でいろんな想像が膨らみ、『この選手は内角の球に対してバットのヘッドを前に出し、引っ張ることができる上、流し打ちもできる。すべての要素が揃った、なんてすばらしい選手なんだ』と感激しました。
 彼が私の目の前でやってのけたことは、ロッド・カルーやジョージ・ブレッドのようなタイプの打者を彷彿とさせるほど、数少ない本当のプロのみが持つ、高い技術を要するものでした」
 コルボーンは、その日見た信じがたい光景を再度思い返しながら、首を振りつつ語り続けた。
「それを蝶の変態に例えるなら、蛹(さなぎ)になった段階。イチローがのちにすばらしいバッターへと進化を遂げる前兆であったのです」
 コルボーンは93年のシーズン後、アメリカに帰国して、97年シーズンにマリナーズに所属するまで、マイナーで監督を務めていた。その間、コルボーンは、日本で甚(はなは)だしく変化を遂げていく”蝶”を常に見つめていた。
 イチローは冬場、自主トレを南カリフォルニアでするようになり、近くに住んでいたコルボーンは、彼のためにノックや打撃投手をするようになった。コルボーンには、コーチとしてイチローの上達を手助けしたいという思いと、マリナーズのスカウトとしてなんとかイチローの意識をシアトルに向けさせたい、という2つの思いがあった。
 そしてコルボーンは99年、イチローがマリナーズのスプリングキャンプに2週間、特別参加できるように手配をした。

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