渡辺久信が振り返る伝説の日本シリーズ。「西武にエースはいなかった」

僕はそれまでも、日本シリーズの初戦で投げることが多かったんですよ。1988年の中日戦、1990年の巨人戦は初戦先発でした。やっぱり、初戦に勝つのと勝たないのとでは全然違うし、負けるより勝ったほうがいいわけだから、「初戦はいいスタートを切ろう」と思っていましたよ。
――1988年と1990年は、いずれも勝利投手になっていますね。
渡辺 そうですね。後に森(祇晶)監督の「日本シリーズは2戦目重視で戦う」という発言を耳にしましたけど、当時はそんなことは何も知らずに投げていましたね。でもこの頃、うちは毎年優勝して、毎年日本シリーズに出ていましたけど、僕にとって一番大事なのは、ペナントレースを勝ち抜くことでした。そして日本シリーズはお祭り騒ぎじゃないですが、ペナントとは違った意識を持っていましたね。ある意味、”ペナントのご褒美”という感じ。当然、ペナントレース開幕戦のマウンドと、日本シリーズ初戦のマウンドは意識が違いました。
――どのように違うものなのですか?
渡辺 シーズン開幕戦のほうがずっと緊張しますよ。ペナントの開幕戦は、感じがつかめない中での「よーい、ドン」のスタートで、手探り状態なんです。でも日本シリーズの場合は、すでにペナントで1年間戦ってきているわけだから、ある程度は自分で感覚をつかめている。同じ「開幕投手」でも、僕にとってはシーズン開幕のほうが緊張したし、ずっと価値のあるものでしたね。

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