記録と記憶。平成の大相撲史に残る名勝負。白鵬を稀勢の里が止めた日

力士たちはこのふたつを土俵で刻みながら、平成の31年を駆け抜けていった。
 その象徴的な戦いが、白鵬と稀勢の里による、2010年九州場所2日目の結びの一番だった。輝かしい記録を築く白鵬と、優勝回数は2回ながら鮮烈な記憶を残した稀勢の里。お互いの相撲観をぶつけ合うような緊張感あふれる激突は、平成の大相撲史の中でも忘れられない名勝負だった。

2010年の九州場所で、白鵬の連勝記録を止めた稀勢の里


 この年、白鵬は、ずば抜けた強さを見せつけていた。初場所14日目から62連勝の負け知らずで、春場所から4場所連続で全勝優勝を達成した。夏場所後に野球賭博事件で元大関・琴光喜、大嶽親方(元関脇・貴闘力)が解雇され、他にも大量の処分者が出るなど不祥事が土俵を直撃。肝心の土俵が色あせた時に、白鵬は孤軍奮闘で本場所を盛り上げていた。
 名古屋場所後に退任した武蔵川理事長(元横綱・三重ノ海)に代わって就任した、当時の放駒理事長(元大関・魁傑)が何度も「白鵬が土俵で頑張ってくれなかったら協会はもたなかった。白鵬の頑張りがファンの目を土俵に戻してくれた」と繰り返していたほど、白鵬の記録は信頼を失墜した国技の唯一の救いだった。
 迎えた九州場所。初日から7連勝を飾れば、1939年初場所で双葉山が残した69連勝という「不滅の記録」に並び、さらに勝ち星を伸ばして前人未到の金字塔を樹立するかに注目が集まっていた。

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