斉藤和巳が燃え尽きた試合。絶望へと繋がる稲葉篤紀に投じたあの一球

もう間に合わへん。『すべてが終わったな』と思いました」
 キャッチャーの的場直樹が川アからの送球を受けたときにはもう、森本がホームを踏んでいた。それを見たスタジアムの観客とファイターズの選手たちが喜びを爆発させた。
 一方の斉藤は、マウンドに手を着いたまま動けなかった。その瞬間は、何の感情も沸いてこなかった。
【魂と意思と責任をボールにこめて】
 それから13年が経った今も、稲葉への投球を的場は強烈に覚えている。
「1球目のストレートがいいボールすぎました。『これで打たれるはずがない』と思いました。あとで稲葉さんが『フォークを狙っていた』と聞きましたが、僕が出したサインは間違っていない。
 セカンドにゴロが転がって、小笠原さんが二塁に全速力で走るのを見て、『間に合わない』と思いました。三塁コーチャーを見たら、白井(一幸)さんが腕を回していたから、『ホームに投げろ』と言ったんですが、野手には聞こえませんでした」
 ショートの川アからの送球を受けた的場はそのまま崩れ落ちた。
「全員がベストプレイをした結果です。和巳は全力で投げた。仲澤も川アも、一塁ランナーの小笠原さんも、やるべきことをやった。ちょっとした差が勝負を分けただけ。送球を受けた瞬間、和巳がうなだれているのが見えて、『あぁ、終わったんや・・・・・・』と思った瞬間、緊張の糸が切れました」 
 もう一度あの場面に戻れるとしたら、どんな選択をするだろうか。

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