斉藤和巳が燃え尽きた試合。絶望へと繋がる稲葉篤紀に投じたあの一球


「同じサインを出すでしょう。後悔はありません。ただ、森本をフォアボールで出したのはもったいなかった。あれでスタジアムの雰囲気が変わってしまった。ファイターズの応援がものすごく盛り上がって、『嫌だなあ』と思いました。和巳のいいストレートを見逃して、フォークを狙って、センターに強い打球を打った稲葉さんがすごかった」
 ゲームセットのあと、斉藤がどうしたのか、的場は知らない。
「みんなで『和巳がいない』となって探したんですが、見つからなかった。もし会っても、かける言葉がなかったでしょうね。僕はホテルの部屋に戻って、ずっとひとりでいました。この試合について、和己と細かい話をしたことがありません。でも、きっと彼も後悔はないでしょう。魂と意思と責任をボールにこめて投げるピッチャーでしたからね」
【斉藤和巳というピッチャーのすべてが見えた】
 マウンドに右手を着いたまま動かない斉藤に肩を貸し、ベンチまで抱えて歩いたのは、フリオ・ズレータとホルベルト・カブレラのふたりだった。9回を投げ終えて燃え尽きた192センチのエースは、大柄の外国人選手ふたりがかりでなければ動かせなかった。
 そのシーンを、療養中の王が見ていた。
「あのシーンに、エースの責任感が表れていた。斉藤和巳というピッチャーのすべてがね。どれだけ責任感を持ってマウンドに上がっていたのか、どんな思いで勝つことを目指していたかがわかった」
 当時、巨人に在籍していた小久保裕紀もテレビで試合を観戦していた。

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