斉藤和巳が燃え尽きた試合。絶望へと繋がる稲葉篤紀に投じたあの一球


「外国人選手に抱えられながらベンチに戻るのを見て、『オレがグラウンドにいたら、最初に近づいていって、連れて帰ってやったのに』と思いました。試合後にはきっと、人目につかないところにいたはずです。悔しすぎて、ひとりになりたかったんでしょう」
 斉藤は身を削る覚悟でマウンドに上がり、敗れた。
【「負けないエース」が燃え尽きた】
 北海道移転後初めての優勝に沸くファイターズの選手、ファンの歓声も、斉藤の耳には届かなかった。記憶は途切れ途切れにしか残っていない。
 斉藤が振り返る。
「マウンドから見えた景色、ベンチ裏まで連れていってもらったことなどは覚えています。誰かに肩を叩かれたけど、自分の力では立ち上がれなかった。そのまま、ベンチ裏でずっと泣いていました。ロッカーまでどうやって歩いていったかはわからないけど、お通夜みたいに静まり返っていて、その空気に触れた瞬間にものすごい責任を感じました。『オレのせいで……』と」
 胸にあったのは、チームメイトに対して申し訳ないという思いだけだった。チームメイトの気持ち、療養中の王監督への思いを背負ってマウンドに上がった斉藤の戦いは終わった。
 斉藤はその後、チームとは別行動を取った。自分で航空券を手配し、福岡ではなく、ひとりで東京に向かった。何もする気にならず、何もすることができず、しばらく部屋に引きこもった。

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