20勝して一人前。権藤博が輝きを放った「ピッチャーが天下の時代」


 さらに権藤さん自身、今の投手たちをどう見ているのか、興味があった。2006年(取材当時)の日本球界は好投手の活躍が目立ち、「ピッチャーイヤー」と言いたくなるほどだった。日本代表が世界一となったWBCでは西武の松坂大輔がMVPを獲得し、ペナントレースでは2人の投手がノーヒットノーランを達成し、高校野球でも夏の甲子園では決勝戦および再試合の壮絶な投げ合いがあった。
 タイトルホルダーを見れば、パ・リーグではソフトバンクの斉藤和巳が勝利数、防御率、勝率、奪三振で四冠に輝き、セ・リーグでは広島の黒田博樹が最優秀防御率を獲得したが、いずれも防御率1点台。両リーグ1点台は1969年以来で、一方では若手の台頭もあったなか、プロ3年目で開幕8連勝を達成した中日の佐藤充は5試合連続完投勝利。これは権藤さんが61年に作った球団記録に並ぶものだった。
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 待ち合わせに指定された場所は都心にあるテレビ局関係のビルの前だったが、日曜日の午前中で人通りはなく、僕らはすぐ権藤さんに気づいた。挨拶をすると軽い会釈と同時に「そこに喫茶店がありますから」と言われ、後に続いた。コーデュロイのジャケットにネクタイというスタイルはいたって紳士的で、スッと伸びた背筋が若々しい。
 名刺交換を終えると権藤さんはアイスティーを頼み、やや前かがみの姿勢で黙って座っている。

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