20勝して一人前。権藤博が輝きを放った「ピッチャーが天下の時代」


「そうねぇ。だけど、最初の巨人戦で勝って、次、完封したりなんかしてる間にもう、僕がエースだなと。それで途中からは、ほとんど一人で投げてるようなものでしたから、今から考えれば、周りの嫉(そね)みみたいなのもあっただろうしね。『な〜にが、新人のクセに。そりゃ、確かにすごいけど、なにが権藤、権藤だ』っていうのはあったでしょうね。
 でも、今から思えば、という話です。当時、1年目だから、周りがどうこうよりもできるだけ勝って優勝する。優勝できなくても、自分ではひとつでも多く勝つ。20勝したときも、20より21のほうがちょっと響きがいいなぁ、みたいな。で、25過ぎると、ここまで来たら30勝もいける。これ過ぎたら新人記録といわれたら、だったらそこまでいくぞ〜みたいな。そんな狙いですよね」
 35勝の中身がほぐれてきた。スタミナに絶対の自信があり、スーパーエースへの憧れにつながった監督からの指令があり、がむしゃらにより多く勝つことを目指した結果としての新人最高記録。ただ、それが生まれたのも、投手としての技量が卓越していたからにほかならない。このあと、話は驚異的な勝ち星を可能にした投球内容の秘密に迫る。
(後編につづく)

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