錦織圭いわく「修行に向かう仙人」。杉田祐一がスランプから脱出した



「今まで経験できなかった緊張感を感じられるのが、本当にうれしい。もっともっと、こういう試合をできる場所に行きたい」

 28歳にしてブレイクスルーの時を迎えた彼は、これから目にするだろう未知なる景色への期待に顔を輝かせていた。

 そのわずか数カ月後――。

 長く暗いトンネルの始まりは、果たしてどこだったろうか?

 年間70〜80試合を戦うテニス選手にとって、敗戦は言わば日常の一部だ。ましてや当時の杉田がいたのは、世界最高峰のツアー大会。トップ選手相手に惜敗がひとつ、またひとつと続いたとしても、それはむしろ彼がこの舞台を主戦場とする証だと思われた。

 だが、勝利のない春が過ぎ、初夏を迎えても勝ち星に見放された頃、彼のなかで何かが崩れ始めていた。

「自分のテニスがわからない。どうやってポイントを取り、どう勝負を仕掛けていたのか、思い出せない……」
 好調時には意識せずともできていた身体の記憶が薄れていく。あの頃の自分はどうプレーしていたのかと考えれば考えるほど、思考の泥沼に足を取られた。

「ツアーで上位選手に1回戦から当たるなかでは、自分の展開になかなか持っていくことができない。その状況下で連敗が続くと、自分のテニスがどのようなものか思い出すことも難しかった」

 気がつけば、2月から5月にかけての戦績は、10連敗を含む2勝12敗にまで落ち込んでいた。

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