母の肋骨を折った不良少年、更生への長い道

母の肋骨を折った不良少年、更生への長い道

渋谷さんは、思わず母親を蹴り飛ばしてしまった。本写真はイメージであり本文とは関係ありません(写真:Deja-vu / PIXTA)

上智大学文学部新聞学科の水島宏明教授が指導する「水島ゼミ」は、大学生に小さなビデオカメラを持たせ、この世の中にある何らかの社会問題を映し出すドキュメンタリーの作品づくりを指導している。

若者たちが社会の持つリアリティと向き合い、最前線で活動する人々と出会うことによて、社会の構図や真髄を自ら把握していってほしいという取り組みだ。そんな若者たちの10章のドキュメンタリーをまとめたのが『想像力欠如社会』(弘文堂)である。その中から高橋惟さんによる『道を誤ってしまった君へ〜元非行少年の願い〜』を一部転載する。

「今日、初めて家族が夢に出てきたんですよ」

ボロボロに削れた爪を噛みながら、カケル(22)がつぶやく。車は木曽川を渡り、愛知県に入ったところだった。視線は窓の外に向いたまま、何を見ているわけでもない。ただ、次々に移り変わってゆく景色を、ぼうっと、眺めていた。

「僕、相当心配してるんでしょうね……」

自分のことなのに、まるで他人事のようだ。先ほどまで元気に話していたカケルの声は、次第に力をなくしていく。少年院を出所して3年経った、ある初夏のことだった。  

なお、登場する少年の名前は、プライバシー保護のため仮名である。

■見た目と優しさのギャップ

2017年6月初旬、私は1人の男性に会うため、東京から名古屋へ向かった。

1 2 次へ

関連記事(外部サイト)