尾身茂会長、政府との危機認識のズレ抱えた苦悩

尾身茂会長、政府との危機認識のズレ抱えた苦悩

「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の尾身茂会長(写真:Kiyoshi Ota/Bloomberg)

「約1年半に及ぶコロナ禍で、何度もルビコン川を渡ってきた」

そう明かすのは、政府の「新型コロナウイルス感染症対策分科会」の尾身茂会長だ。専門家として何より必要なのは、サイエンスをベースにした社会的応用だと信じている。官邸や政府に煮え湯を飲まされながら、そのたびに歴史の審判に堪えうる科学者としての「インテグリティー(高い倫理性)」を貫いてきたつもりだ。時には政府批判とも受け取れる言葉を発してきた尾身氏だが、それも専門家としての「説明責任」だったと振り返る。

地域医療機能推進機構理事長を兼ねながら、新型コロナ対策の専門家集団を率いてきた尾身氏が、このほどインタビューに応じた。感染症対策と経済の再建との間で揺れる政府と、専門家集団との認識のズレを埋めるために苦悩したことを打ち明ける。いくつもの正念場を乗り越えてきた尾身氏の、いわば“告白”だ。

■「専門家会議」として初めての「見解」

尾身氏が最初に「ルビコン川を渡った」と打ち明けるのは、国内に感染が拡大する前の2020年2月のこと。厚生労働省に設けられた「専門家会議」として、初めての「見解」を公表したときだった。

2月3日、感染者が乗船していたクルーズ船が横浜港に寄港した。厚生労働省は、専門家を集めたアドバイザリーボード(ADB)を設けた。

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