フィリピン大統領に非難込めたノーベル平和賞

フィリピン大統領に非難込めたノーベル平和賞

2021年のノーベル平和賞を受賞したマリア・レッサ氏。権力を批判的に報道してきた彼女への受賞はドゥテルテ大統領にも衝撃を与えた(写真・EPA=時事)

2022年5月に実施されるフィリピン大統領選の立候補締め切り日だった10月8日夕刻、選挙の構図が固まったかどうかをチェックしていた私は思わずエッと声を上げた。ネットメディア「ラップラー」のマリア・レッサCEOがノーベル平和賞を受賞したとの一報が飛び込んできたからだ。同氏が推薦されたという報道に接した記憶はあったが、ジャーナリズムの世界から選ばれるとすれば「国境なき記者団」だろうと想像していた。

■言論弾圧の国際認定

レッサ氏の受賞はひとえにドゥテルテ大統領がゆえ、である。私は新聞社でマニラ特派員をしていた1990年代から、CNNマニラ支局やジャカルタ支局でリポーターを務めるレッサ氏の仕事ぶりを見てきた。2012年にラップラーを設立して以降も、リベラルな立ち位置から時の権力を批判的に報道してきた彼女の姿勢は一貫しており、変化していない。今回の受賞は、彼女が世界を揺るがすスクープを放ったからではない。

ドゥテルテ政権が最重点施策とする「麻薬撲滅戦争」で、司法手続きを経ない超法規的殺人を繰り返してきた実態や、SNSを使って世論を誘導するさまを粘り強く告発し、政府とその支持者から執拗な攻撃を受けながらも敢然と報道を続けていることが評価されたのだ。

ドゥテルテ政権は2018年以来、レッサ氏を名誉毀損や詐欺、脱税などで次々と訴追し、二度逮捕した。

1 2 次へ

関連記事(外部サイト)