貧困シングル母「善意の若者」に浴びせた洗礼

貧困シングル母「善意の若者」に浴びせた洗礼

生活保護を取り上げられないように生きているシルヴィアから見た、働く必要のないベッツィは…(写真:MNStudio / PIXTA)

華やかなグローバル都市ニューヨーク。ウォール街の金融エリートや新進気鋭のアーティストが活躍する一方、売春婦、移民、ヤクの売人たちもしのぎを削り、セレブと貧困層とが社会階層を超えて共存している街だ。その実態を描いた『社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた』が刊行された。

本書の著者スディール・ヴェンカテッシュはもともと貧困層の研究をしていた。しかし、ニューヨークの本質を理解するには、上流階級と貧困層の両方を分析対象にする必要があると気づく。

そんなとき、一族の慈善団体の後継者で、貧困支援に取り組もうとしている裕福な若者3人(カーター、マイケル、ベッツィ)が、ヴェンカテッシュのもとに教えを請いにやってきた。「渡りに船」と喜ぶヴェンカテッシュだが……。

ここでは、貧しいシングルマザーがどのような生活をしているのかをわからせるため、ヴェンカテッシュが若者3人を連れてハーレムを訪ねた箇所を本文から抜粋し、一部編集のうえ掲載する。

■貧困シングルマザーが怒る生活保護のおきて

ぼくらはタクシーで145丁目まで行き、古くて狭苦しいアパートの前で降りた。ぼくらが訪ねるのはシルヴィア・マッコウムズ、女手ひとつで3人の子どもを育てている。彼女のアパートに入ると、中は質素でこぎれいだった。

「シルヴィア」。ぼくはそう話しかけた。「ぼくたち、お役所仕事のことを本で勉強してるんだ。ほら、福祉事務所とか保健所とか福祉士の人たちとか。あいつら、君がぜったいに儲からないように、福祉でお金持ちにぜったいならないようにしてるよね。この子たち、『家に男』ルールがわからないんだ」。

「あたしだってわかんないよ」とシルヴィア。「ありゃクソだな」。

そう言ったところで彼女は止まらなくなった。苦労して手に入れた手練手管を誰も褒めてくれない、そう感じているたくさんの人と同じように、やっと話を聞いてくれる人が現れたのを、彼女は喜んでいた。

続きは 東洋経済オンライン で

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