人はなぜ年金に関して間違えた信念を持つのか

人はなぜ年金に関して間違えた信念を持つのか

年金財政検証の公表とともに始まる報道合戦には注意が必要だ(写真:happyphoto/PIXTA)

今年は、公的年金保険の5年に一度の健康診断である財政検証の年である。その発表を号砲に、年金報道合戦が開始されるのだろう。正直なところ、やれやれ面倒だなという気がしないでもない。

というのも、どうも年金というのは、誤解を受けやすい側面を持つようで、記者はもちろん、学者、研究者も含めて、世間では知識があると思われている人も、間違えた信念に基づいて、公的年金に対して暴力的に振る舞うところがあるからだ。財政検証が出た後、またしばらくそうした話を目にし、耳にしなければならないのか……疲れる。

僕らは以前から、年金の天動説と地動説という話をしてきた。一見すれば天が動いているように見えるけれど、よく観察すると地球が動いていることがわかる。最近は、年金天動説を「ヒューリスティック年金論」と呼んでいたりもする。

■「類似性」に基づいて間違って判断する

心理学の世界でつかわれるヒューリスティックとは、人間が複雑な問題に直面して何らかの意思決定を行うときに、これまでの経験に基づいて直感的に判断することである。その判断は瞬時になされ、思考への負荷は小さいが、その判断結果が正しいわけではなく一定の認知バイアス(偏り)を含んでいることが多い。そして、ヒューリスティック年金論には認知バイアスがかかりすぎている。

行動経済学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーは、認知バイアスが生じる原因のひとつに「代表性」に基づく判断、つまり目立った特徴や単なる表面的にすぎない特徴でもって、物事の類似性を測り、その類似性に基づいて判断をすると論じていたが、多くの人たち、特に経済学者や日々運用に携わっている金融のプロ、そしてメディアの経済部(時に制度に疎い政治部)は、公的年金を「市場」という代表で理解しようとするところがあり、間違えたことを胸を張って言い続ける。

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