原爆を運んだ米軍艦を沈めた帝国海軍のある軍人

原爆を運んだ米軍艦を沈めた帝国海軍のある軍人

『Indianapolis』(Lynn Vincent,Sara Vladic、Simon & Schuster)

■今回の一冊■
Indianapolis
筆者 Lynn Vincent、Sara Vladic
出版社 Simon & Schuster

 アメリカのベストセラーを読んでいると、日本人である自分でさえ知らない日本人の名前が出てきて驚くことがある。今回とりあげる本書でも、そうした新鮮な驚きを体験できた。現代の日本ではほとんど語られることのなくなった大日本帝国海軍のある軍人が登場する。

 その軍人とは第二次世界大戦で、伊号第五十八潜水艦の艦長だった橋本以行(はしもと もちつら)だ。橋本が率いる伊58潜水艦は大戦末期の1945年7月に、アメリカ海軍の重巡洋艦インディアナポリスを魚雷で撃沈しフィリピン海の底に沈めた。本書はこの日本軍に撃沈された軍艦インディアナポリスと、その生き残った乗組員たちの名誉回復に向けた長年にわたる戦いを描くノンフィクションだ。

■アメリカ海軍の歴史のなかで最悪の惨劇

 本書はニューヨーク・タイムズ紙の7月29日付の週間ベストセラーリストの単行本ノンフィクション部門に5位で初登場した。6週連続でランクインした9月2日付の番付でも11位につけた。日本では原爆の日や終戦記念日を迎え第二次大戦をめぐる話題をメディアがこぞって取り上げる同じ時期に、アメリカではまったく違う視点から第二次大戦の悲劇をとらえなおす本がベストセラーとなっていたのだ。

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