「進化にエネルギーの視点を組み込む」という大胆な発想

「進化にエネルギーの視点を組み込む」という大胆な発想

『生命、エネルギー、進化』(ニック・レーン 著、 斉藤隆央 翻訳、みすず書房)

 ビル・ゲイツに、「この男の仕事についてもっと多くの人が知るべきだ」と言わしめた、ニック・レーンの最新邦訳が本書である。

 「ニックはジャレド・ダイアモンドのような書き手たちを思い起こさせる。世界について多くを説明する壮大な理論を考え出す人々だ」。そうゲイツが語るように、ニック・レーンは本書で、「独創的な思索家のひとり」としての面目を大いに施した。

 これまでの進化生物学には、わずかな痕跡や現生生物からの推測に頼る心もとなさが、多かれ少なかれつきまとっていた。レーンはそこに、進化におけるエネルギーの重要性という概念を持ちこんで、「物理的に議論できて実験による検証もしやすい」ものにした。

 「化石のような物的証拠がないなかで、生命が誕生してから、原核生物が細菌と古細菌に分岐し、真核生物と有性生殖が登場するまでのいわば『生物学のブラックホール』のプロセスを、唯一確かなことがわかっていると言えそうな太古の地球環境を手がかりに、酸化還元を中心とする化学反応とエネルギー論の観点から緻密な議論できわめて野心的な仮説を組み上げた」(訳者あとがき)レーンの手腕は、さすが、とうなるほかない。

■あっさり覆される「伝統的な見方」

 本書の著者ニック・レーンは、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の遺伝・進化・環境部門、UCL Origins of Life プログラムリーダーを務める。

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