遺体をめぐる謎、見えてきた「格差」

遺体をめぐる謎、見えてきた「格差」

『死体格差 解剖台の上の「声なき声」より』(西尾 元、双葉社)

 殺人事件の遺体を解剖し必死に死因を突き止めようと司法解剖を行うシーンをテレビドラマなどで見かける。ただ、多くの人にとって、法医学解剖医は医師の中でもっとも遠い存在であり、接することもないだろう。それもそのはずで、法医学会が認定した医師は、全国に150人ほどしかいないという。かれらは、日々、どのように遺体と向き合っているのか。『死体格差』(双葉社)を上梓した兵庫医科大学法医学講座の西尾元主任教授に話を聞いた。

――20年間、さまざまな遺体を解剖してきたと思いますが、その中でもタイトルにある”格差”をもっとも感じたのはどんなケースでしょうか?

西尾:会社をリストラされ、独身でひとり暮らしのまま、誰にも発見されず自室で亡くなり、死後数日経ってから発見されるようなケースがあります。一般的にそこに格差を見るのかもしれません。しかし、年間200〜300体もの遺体を解剖していると、特別な何かを感じなくなっていました。

 今回、執筆の依頼があり、あらためてここ3年ほど前から始めた解剖した遺体についての記録を読み返すと、経済的、社会的、人間関係の面を見ても、社会的弱者と呼ばれる人が、解剖室へ運ばれてくることが多いことに気が付きました。この記録には、独居か同居か、飲酒の有無、精神疾患の有無、生活保護を受給しているかどうかなどの情報を警察から聞いて記録しています。他大学の法医学教室でそうした記録を取っているのかはわかりませんが、症例研究を行うために記録するようにしています。

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