復古創新――過去・現在・未来を結ぶ1パーセントの壁

復古創新――過去・現在・未来を結ぶ1パーセントの壁

復古創新――過去・現在・未来を結ぶ1パーセントの壁の画像

 全国に衣料や雑貨を扱う店を30店舗以上展開し、150人余りの従業員を擁する年商20億円の「株式会社石見(いわみ)銀山生活文化研究所」。島根県大田(おおだ)市大森町にある本社の目の前には田んぼが広がり、背後には緑深い山が迫っていた。本社で働く約50人の社員のための食堂や地域交流の場として活用されている、隣接の築270年の古民家「鄙舎(ひなや)」は、茅葺(かやぶ)き屋根の葺き替えの真っ最中だった。

 「暮らす服」として多くのファンを持つ服飾ブランド「群言堂(ぐんげんどう)」の本店も、築200年以上の武家屋敷を再生した予約の取れない宿として有名な「暮らす宿 他郷阿部家(たきょうあべけ)」も、本社周辺にある。世界遺産・石見銀山がある大森町は、出雲市駅から山陰本線で大田市駅まで45分、さらに本数の少ないバスで30分。町には信号もコンビニもない。

 「さらに有料駐車場がない。空いている土地を無料で開放するって、すごいモラルだと都会の人はびっくりするようですね。この町の誇るもののひとつかな。かつては銀山周辺で20万人も住んでいたと言われているけれど、今は人口約400人。ゼロに向かわず、増やすという方向でもなく、自分たちの暮らしを大事にして穏やかさと観光地の落ち着いた賑わいを両立させているんじゃないかと思っています」

 玄関に近い会長室でまず町と人と暮らしについて口にした松場大吉は、1953年にこの町で生まれている。

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