スイスで見た金与正氏の横顔

スイスで見た金与正氏の横顔

文在寅大統領と握手する金与正労働党中央委第1副部長(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 「北朝鮮では餓死者が出ているというニュースを見ていたので、そんな国から来たという子がぽっちゃりしていたのを不思議に思った」

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長の妹、与正(ヨジョン)氏が1990年代後半に留学したスイスの公立小学校を訪れた時、当時を知る女性教師から聞いた言葉だ。毎日新聞ジュネーブ特派員だった私が金正恩氏の情報を探っていた2009年6月のことだった。韓国・聯合ニュースが同年1月に「金正日総書記の後継者は三男の金正恩氏に決まった」と報じ、正恩氏への関心が一気に高まっていた時期だ。

 今回は、兄の特使として訪韓し、文在寅大統領に北朝鮮を訪問するよう要請したことで注目された与正氏について紹介しよう。

■予想していなかった妹の台頭

 最初に告白しておくと、与正氏のスイス生活について多少なりとも取材できた記者はほとんどいないと思われるものの、私の取材も突っ込んだ内容のものではなかった。今になって悔やまれるのだが、与正氏には大きな関心を持っていなかったからだ。正恩氏の足跡を探る途中で与正氏の話にぶつかったから取材したけれど、正恩氏に関する情報を先に見つけていたら妹の留学など調べもしなかったような気がする。それでも、少しは調べたので書いてみようということである。

 冒頭で紹介した女性教師の言葉通り、当時の北朝鮮は「苦難の行軍」と呼ばれる最悪の食料危機に見舞われていた。

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