「力」による国境変更を認めたトランプの愚

「力」による国境変更を認めたトランプの愚

(masterzphotois/Panacea_Doll/grinvalds/iStock)

トランプ米大統領は3月25日、イスラエルが占領しているシリアのゴラン高原に対するイスラエルの主権を承認する文書に署名をした。4月9日のイスラエルの総選挙を前に、ネタニヤフ首相を援護する意図から出たものであろう。

 ゴラン高原は、1967年の第3次中東戦争でイスラエルが占領したが、これに対して国連安保理決議242は、「最近の紛争で占領された領土からのイスラエル軍の撤退」、「地域のすべての国の主権、領土的一体性、政治的独立を認めること、彼らが武力の威嚇と行使から自由で、安全で承認された国境内で平和裏に暮らす権利を持つことを認めること」を呼び掛けている。この決議を受諾し、アラブ諸国もパレスチナ当局も事実上イスラエルの生存権を認めた。国境の正確な輪郭は当事者間の交渉にゆだねられた。これがエジプト、ヨルダンのイスラエル承認に、西岸・ガザについてのパレスチナ人との、ゴラン高原についてのシリアとの長い交渉になった。「最終的解決」はパレスチナとの間では達成されていないし、シリアとの間では合意はない。しかし、とにもかくにも安保理決議242が1967年以降のすべての和平交渉の基礎になっていた。

 トランプは、「イスラエルの安全保障のため」ということで、上記の経緯を全く無視してゴラン高原へのイスラエルの主権を承認した。驚愕させられる事態である。このようなことを米国は法的にできるのか、安保理決議に違反せずしてできるのか、疑問である上、力による国境変更の是認が今後の国際秩序に与える衝撃、危険を感じざるを得ない。

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