印パの相互核抑止は実際に機能するのか

印パの相互核抑止は実際に機能するのか

(iStock.com/flySnow/Purestock)

カシミール地方の領土争いめぐりインド、パキスタン間の緊張が高まる中、両国が保有する核戦力の「相互抑止力」が果たして戦争を回避できるのかという論議が欧米で活発化しつつある。ホワイトハウスも昨年1月公表した「米国国家安全保障戦略」報告書の中で、印パ間での核戦争の危険に言及、深刻な懸念を表明したばかりだ。

 「核抑止力=nuclear deterrence」とは、圧倒的破壊力を持つ核兵器を保有することで相手国は報復を恐れ、侵略や攻撃を思いとどまり、結果的に戦争を回避できるとのコンセプトを意味する。冷戦時代、米ソ両超大国が核戦争に至らずに済んだのも、双方が、いずれかによる先制攻撃に対し大量核報復できる体制を維持してきたからだと説明されてきた。さらにそこから、核武装が平和確保を保証するといった極論さえ一部に存在する。

 ではインド、パキスタン間の紛争の場合も、双方が核武装している現状をもって、「相互核抑止力」が機能し、結果的に核戦争につながることはない―と単純に言い切れるだろうか。実際は、そう簡単な話ではない。「核の均衡=nuclear parity」を維持してきた超大国間の体制と、宗教や民族問題など複雑な要素が絡んだ印パ間のような地域紛争とは同日には論じられないからだ。

 そこでなぜ、印パ情勢が楽観を許さないかについて、過去の事例を参考にしつつ、冷静に議論する必要がある。

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